「狐になった奥様」 ガーネット
ある日突然、上品で若くて可愛らしい奥様のシルヴィアが狐に変身してしまったお話。
誰でもカフカの変身を思い浮かべるだろうなーと思った。
ただ夫のテブリック氏が妻の狐に注ぐ一途で大きく深い愛情と
彼自身のとんでもない純粋さのおかげで
最終的に、不条理小説でも、比喩的な風刺小説でもなく
可愛らしくて切ないファンタジーを読んだような、気持ちになった。
絶望と希望、狂気と正気の間をいったりきたりあっちこっちなお話なのに
何だか、和んでしまうのだ。
テブリック氏はとても弱い人に見えて、とても強い人だったのだろうな、と
最後の一文を読んで思った。
作中は、当時としては、ものすごくオーソドックスな
父権主義的な、或いは封建的な、夫婦関係の暗喩に感じる部分が
たくさんあるのだが、それがふっとんでしまうほどテブリック氏が必死で可愛くて
最後のほう、狐の子たちと野宿しながら狩りを手伝っている様などは
もうこれ絶対視覚的にみたらただの狂人、とわかっているのに
何となく、口元が愛しく可愛いものを見るときと同じ感じで
ほころんでしまいそうになったりしたのだった。
以上、三冊で「ほんのまくら」フェアで買った本はおしまい。
「夜間飛行」はいつか読もうと思ってた本だった。
「頭のうちどころが悪かった熊のお話」は自分の好みにドンピシャなお話だった。
「狐になった奥様」は自分からは買わなかったであろう本で
だからこそ、出会えたことが面白いようなお話だった。
あのフェアでもっと買ってみたい(出会ってみたい)と思うのだけど
週末部屋を整理して、積読本の多さにワオとなったのでしばらくはそちらを消化しよう。
できれば、またいつかフェア第二段などをやってもらえたら嬉しい。