october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

残穢/小野不由美

ようやく歯医者通いを再開した。今行っている歯医者さんはわりと昔ながらのところで、腕は良いんだけど、なんと言うかムーブが大胆で、最近の歯医者さんのように表面麻酔をしてから「ちくっとしますよ〜」と言いながら麻酔……ということはしてくれず、むしろ全くなんの予告もなしにいきなり麻酔を打たれる。思わず脳内で俳句にしてしまった。

 

予告なく打たれる麻酔かまいたち

 

その後も予告もなく激しく削られ、予告もなく違う場所の金歯を剥がされ、予告なく洗浄され、放心しているうちに予告なく治療は終わった。「麻酔が切れたら痛みがでるかもしれません」と言われたので(痛みの予告はあった!)「痛くなったらまたきた方がいいですか?」と聞いたら、「痛み止め飲んでおいてね」と諭されるように言われました。はい。そうします。なお痛み止めは貰えなかった。ロキソニンアセトアミノフェンならストックが山ほどあるからいいけど。少しじわじわ痛いけど、まあなんとか大丈夫。

 

数年前、読もうかなと思って本屋で手に取ったらいきなり挟んであったもの(広告の冊子のようなもの)がバサバサと落ちて、本屋で本を手に取るなんてしょっちゅうあるのにそんなこと初めてだったのでなんか嫌な予感がしてそのまま置いてしまった。今回、何か読みたいと思って手に取って、一度開いたらほぼ最後までノンストップで読んでしまった。

 

ノンフィクションのルポ風だからすごい読みやすく、そして怖かった。何が怖いって、こう、絶妙なリアリティがあるところ。作られたホラー感がないと言うか、本当に残穢という現象はあるんだな、と思わせてくるところ。そして、そこから、今自分の住んでいるところについてや、この世界で起きているかもしれない残穢について、延々と考えてしまうところ、など。妄想しがち、すぐ不安になりがちな性質の人間(わたくし)に、最も効くタイプのホラーな気がする。

 

さって畳を擦る音だとか。赤ちゃんの声だとか。わりと日常的に聞こえがちな感じの怪奇なのも、うまいなぁって思う。うまい。こわい。やめてほしい。こわい……。

 

まあ、映画版では「私」も久保さんも、それぞれ原作より10歳くらい若いキャラ設定になっているっていうところにもわりとジャパンのリアルホラーを感じましたが。いや、「私」に至っては-20歳くらいか?