october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

ジョゼと虎と魚たち/田辺聖子

美容院の予約まであと30分というタイミングで昼ご飯を食べねばならず(遅昼で、とにかく腹ペコだった)、美容院の近くにある大好きなパン屋さん兼カフェに言ったら、店内のイートインコーナーが満席で、仕方ないので、この寒空に一人でテラスで食べた。ローカル駅でありつつそこそこおしゃれな駅前の一角の小道で、人通りは激しい訳ではないが少なくもない場所の三席しかない小さなテラス席。もちろん他には誰もいない。自意識過剰なタイプだったらお昼を食べ損ねていたかもしれない、と思いながら、パンとスープを食べたが、そもそもそう言うことを考えてしまう時点でわりと自意識過剰なのかもしれない、とも思った。ナスとたっぷりきのこのミネストローネ、ザワークラウト(キャベツの酢漬け)を挟んだフランクロール、そして名物の三角スコーン。食べ始めたら、ビルの隙間から西日が登場して、めっちゃ顔面に直撃して、周囲が何も見えなくなった。眩しかったけれど、それはそれでちょうどよかった。「あの人めっちゃ眩しそうに食べてる」って思われたかもしれない、とも思ったが、そもそも誰も見ちゃいない。なんにせよ人がものを食べている様というのはどうしても間が抜けているものだから、かっこつけもできないよなぁと思い、大豆田とわ子も食べている姿はちょっと間抜けででもだから可愛かったんだよね、と思ったけど、そもそも松たか子を思い浮かべている時点で図々しいな、とも思ってちょっとおかしくなった。こんなことを一人でもくもくと食べている間ずっと考えていたんだけど、そもそも一人でごはんを食べている時ってみんな何を考えているんだろうね。

 

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スープも、パンも、スコーンも、全部美味しかった。お腹が満たされてハッピーな気持ちで美容院に向かった。

 

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なんでもないことが、なんでもある。一言では言えない、男女の話。なんとなくの時代の空気を味わいながらも、気楽に読んで楽しかった。「雪の降るまで」の、以和子とか、私とは全く一部も重なるところがない人生だけど、素敵だなぁ、乙だなぁ、などと思ってしまうのだった。

昔、付き合っていた男の子がこの本が嫌いで、悪口を聞いていたのでなんとなく手に取ってなかったんだけど、もっと早く読んでいればよかったなと思った。同時に、あの子は嫌いそうだなと思った。そして、その子に言われたあれやこれやを思い出して、ははぁ、と言う気持ちになったりもするのだった。