息が詰まるように続いていた梅雨が8月1日にようやく明けた。朝起きると窓の外には青空が広がり、ベランダの植物にはちゃんと日差しが当たってくれる。それだけのことで、胸の奥まで晴れ渡る気持ち。子とどこにも遊びに行けない、友達にも会えない、スーパー以外に買い物にも行けない、飲みにも行けない単調な自粛の毎日を続けてはいるものの、憂鬱の種が一つでもなくなったことを今は素直に喜びたい。
俳句てふてふへの7月の投句は33句。詠めなかった日もあるけれど、とりあえずならせば一日一句以上になるので良いとする。現在3級。評価が一番高かったのが28いいね、最も低かったのが8いいね。上位5句と、点数は微妙だけど自分で好きだった句を幾つか書いてみる。
ごめんねは水蜜桃の後で聞く
28いいね。色々と内省があった上で詠んだ句なので、決して家族と喧嘩したわけではないことは言い添えておく。水蜜桃って言い方は、私世代のオタクに刺さる気がしている。
炭酸の音のみ聞こゆ夏の夜
26いいね。子を寝かしつけに時間が掛かった後の本当に束の間の一人時間で、疲れ果ててぼんやりソファで炭酸水を飲んでいたら、そのパチパチという音が妙にしみじみと良かったので。音無い雨が振っている夜で、風もなければ、蝉の声もまだまだ無かった。
短夜に回転木馬の夢を見る
22いいね。これは過去の写真を見ていたら、夢のような回転木馬の写真を見つけたので。ルスツリゾートの遊園地ですね。去年の夏休みの旅行。あれから一年経ったけど、本当にしばらくは旅行はとても無理そう。寂しい。
丸い脳四角い西瓜生み出した
21いいね。近所のスーパーに四角いスイカが入荷してた。あまりに立派な四角なので目をむいたのもあるが、何よりその値段にビックリしましたね。
短夜が永遠に感ずる子の病
20いいね。ここでも書いたが、うちの子は最近本当によくお熱を出す。3週間ぶり、6回目。特に最初の夜は、とても長く感じる。
以上が上位5句。次の二つはアガパンサスについて。アガパンサスは季語じゃないので、無季になってしまっているのだけど、どうしても詠みたかったのだった。
アガパンサス異界を覗く無数の目
16いいね。見て感じたそのまんま。深い色味なのもそれっぽいなぁと。どちらかというと、向こう側から誰かがこちら側を覗いているイメージ。あちらさんにしたら、我々の現世が異界なのだ。
雨が降るように散りゆくアガパンサス
14いいね。アガパンサス、花や蕾が、まるで大粒の雨みたいにぱたりと落ちるので、散り際の音がけっこういいなと思って詠んだ。
というわけで、7月は以上。おそまつさまでした。
とにかく旧かなづかいや文語体がわからないので、今はこんな本を読んでいる。自分が文語体で作ってみたいというのもあるけど、むしろ文語体の句を読んだ時にすんなり理解できないのが悔しいので……。
読みながら、ドイツ語で、名詞の男性・女性・中性(der / die / das)を暗記しなきゃ行けなかった苦しみを思い出している。
此処からはまた幾つか好きな俳句をご紹介。自分でも読み返すと楽しいのでメモして行きたい。出展はほぼ角川俳句8月号から。
暑さ全てロッケンロールあんこ炊く
赤羽根めぐみ
ロッケンロール!!!私も炊こう、あんこを。
八月の赤子はいまも宙を蹴る
宇多喜代子
句の背景とともに、8月に想いを馳せる。
鬼灯は未完の楽器魂まつり
八染藍子
色んな意味で好き。
冗談に交へる本音濁り酒
的場秀恭
あー、友だちと飲みに行きたいマッコリ飲みたい。
塩かげん薄めに今朝の豆ご飯
菅野孝夫
安野モヨコ「くいいじ」の、豆ご飯の回を読んだばかりなのでにやっとしてしまいました。
朝蝉よ若者逝きて何んの国ぞ
金子兜太
本当にそう思うし、昔から変わらず今もこうである気がして辛い。
天の川三途の川に合流す
将夫
どちらも空にあるようでいて、やはり三途の川は地下にある気もする。もしくは空から地下に繋がっているのかもしれん。昔行った霊場恐山にも三途の川はあった。じゃあ青森か。
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
池田澄子
さらっとしてて、ふわっとしてて、ドキッとする感じが好き。
ちなみに角川俳句6月号は「俳諧味」がメイン特集だったのだが、そもそも俳諧味とは???という感じの初心者でも楽しめる文章がいっぱいあって、特に西村麒麟さんの以下の文章がとても好きだったのでメモ。
もし、この国の社会がますます悲惨な道を辿るなら、その時は俳諧が精神的な力になる人もいるだろう。地獄を地獄と嘆くのも良いが、地獄で笑っている人の方が涼しく見える事もある。今回例句とした作品を読み返すと、俳諧はどうも地獄に強い詩のようだ。
地獄に強い詩。とても好きなフレーズ。笑いの種類を意識するということは、小説でも参考になるかも知れないとも思った。
ふらんす堂友の会に申し込んでみた。楽しみ!