october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」の作り方/マイク・ヴァイキング

ギリギリでバスに乗り遅れて少し残念な気持ちでバス停に立っていた所、救急車のサイレンが聞こえてきた。大通り沿いの旧大通りで、車通りの大変多い片道一車線。しかもかなり詰まっているので大丈夫かなと思ったら、救急車がぎゃっと反対車線に入って猛スピードで走っていったので「えっ!?大丈夫なん!?」と思ったら、少し先の信号(青信号)で、その反対車線にいたバス(私が乗るのと逆方向)が、ピタッと止まっており、そこでバスが止まってるから救急車は安全にその交差点で右(病院の方向。大体救急車そっちいく)に曲がっていった。

だからなんだという話なんだが、そしてこれは交通ルール上当然の話なのかもしれないが、バスと救急車の連帯感というか信頼関係というか、俺がここを止めておくからお前は先にいけっ!みたいなのをみた気がしてちょっと嬉しかった。

昨日の句会で先生が「春はなぜかバスとバス停の句が増える」と言っていた。確かに昔春にバスの句作ったな……と思い出すなどした。若干お酒が残っていて今日は少し眠い。

 

数年前に一緒に働いていた人がデンマークの人で、とても素敵な人だったので、それ以来デンマークにずっと良い印象がある。最近The Happiness Labを聞いていたら、デンマークの幸福度が高いという話とともにHYGGEの話が出てきたので、良さそうと思ってこの本を手に取ってみた。

「悪い天候などない。ただ、悪い服装があるだけだ」というのは、デンマークでよく耳にする言葉だそうだ。つまり、それだけ天気が悪くて寒くて暗い季節が長いということらしいのだけど。だからこそおうちの中をどれだけ居心地良くするか、そして親しい人との時間をより良く楽しむかというところにめちゃめちゃ力を注いでいるということみたい。最近の悪天候続きに自律神経も気分もやられまくりなので、少しずつ真似できるところから真似して行きたいと思う。

なぜか突然、中学受験。/細川貂々

二月の勝者における島津父みたいな、中受で子供を支配するように扱うお父さんのことを父能研(大手塾の日能研にかけて)と言うらしい、と知って笑っていたのだが、身近に居ると知って、ひょえっとなるなどした。

 

さいきん雨の日が本当に苦手で(ほぼ家にいるくせに!)、寒いし頭痛するしやる気出ないしで、やることを積みすぎている。

こういうケースもあるよね。さくさくしてて面白かった。ツレさんが待ってる間クラシック聴いてるのよかったな。素敵な学校と出会えてよかった。

 

 

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった/岸田奈美

子が、複数の男子に「女なのに自分のことを僕と呼ぶのはおかしい」と言われたと言って怒っていた。「そんなこと言う奴にはうるせー!と言ってやりな」「頭が古いんだなって思えばいいよ」と伝えたら、ゲラゲラ笑っていた。でも、実際「うるせー!」と言うと相手が逆ギレするかもと思い怖いらしい。現実問題としてはそれもわかる(私もあんまり言えないし)。ただ、実際言うかどうかの話ではなく、全て真摯に真面目に真っ直ぐ受け止める良い子ちゃんでいるより、瑣末でどうでもいい意見やアドバイスに対して「うっせーんだよ!!」と(最低限、心の中だけでも)跳ね返す胆力は、この社会で女を生きていく上で必要なものだと思っている。人生は短いのでな。かまってる暇はないのだよ。

 

岸田奈美さんの生き方や考え方で、今ハマっているThe Happiness Labの内容をちょいちょい思い出す。幸福とは生まれ持って与えられるものでも、勝ち取っていくものでもなくって、あり方を試行錯誤していくことと、過去の後悔や未来の不安に囚われて今をおろそかにしないこと、大切な人をちゃんと大切にしていくことの先にある状態なんだと思う。

映画の生まれる場所で/是枝裕和

祖母のお墓参りに行ってきた。けっこう久しぶりだったな。前に行った時は3歳だった子が、今回は7歳。せっせと草取りや、墓石を磨くのを手伝い、お線香を備えて、会ったことがないひいおばあちゃん、ひいおじいちゃんに手を合わせて何やらむにゃむにゃ言っていた。孫たちは皆、ひ孫どころか結婚式すら見せてあげられなかったけれど、今年7番目のひ孫が生まれるみたいですよ、おじいちゃん、おばあちゃん。

祖母は東日本大震災の三週間前に亡くなったので、あれから13年、というニュース見出しを見て、もう亡くなってから13年か、と、併せて思い出す。亡くなる数日前に、婚約者(つまり夫)と会って貰えたのは、よかったな、と思っている。

スギ花粉の本拠地みたいな場所で、くしゃみは止まらなかったけど、天気が良くて、静かで、穏やかで良い墓参りだった。

 

出会いと対話、人たちの記憶。たくさんの人たちがさまざまな想いを抱えながらも、既定路線をただ走るのではなく小さなチャレンジと偶然と化学反応を積み上げながら、織り上げていくのが映画なんだな、と思える一冊。血の通った、丁寧な仕事。

昔一度だけ、とある映画のティーチインで、是枝監督に質問をさせてもらう機会があった。とても丁寧に答えていただいたことと、その内容はもちろん、手を挙げた時に「では、そこの赤いセーターのお姉さん」と、当ててもらったことまでなんか鮮明に覚えているのだった。今はなき、渋谷シネマライズでの話。