october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった/岸田奈美

子が、複数の男子に「女なのに自分のことを僕と呼ぶのはおかしい」と言われたと言って怒っていた。「そんなこと言う奴にはうるせー!と言ってやりな」「頭が古いんだなって思えばいいよ」と伝えたら、ゲラゲラ笑っていた。でも、実際「うるせー!」と言うと相手が逆ギレするかもと思い怖いらしい。現実問題としてはそれもわかる(私もあんまり言えないし)。ただ、実際言うかどうかの話ではなく、全て真摯に真面目に真っ直ぐ受け止める良い子ちゃんでいるより、瑣末でどうでもいい意見やアドバイスに対して「うっせーんだよ!!」と(最低限、心の中だけでも)跳ね返す胆力は、この社会で女を生きていく上で必要なものだと思っている。人生は短いのでな。かまってる暇はないのだよ。

 

岸田奈美さんの生き方や考え方で、今ハマっているThe Happiness Labの内容をちょいちょい思い出す。幸福とは生まれ持って与えられるものでも、勝ち取っていくものでもなくって、あり方を試行錯誤していくことと、過去の後悔や未来の不安に囚われて今をおろそかにしないこと、大切な人をちゃんと大切にしていくことの先にある状態なんだと思う。

映画の生まれる場所で/是枝裕和

祖母のお墓参りに行ってきた。けっこう久しぶりだったな。前に行った時は3歳だった子が、今回は7歳。せっせと草取りや、墓石を磨くのを手伝い、お線香を備えて、会ったことがないひいおばあちゃん、ひいおじいちゃんに手を合わせて何やらむにゃむにゃ言っていた。孫たちは皆、ひ孫どころか結婚式すら見せてあげられなかったけれど、今年7番目のひ孫が生まれるみたいですよ、おじいちゃん、おばあちゃん。

祖母は東日本大震災の三週間前に亡くなったので、あれから13年、というニュース見出しを見て、もう亡くなってから13年か、と、併せて思い出す。亡くなる数日前に、婚約者(つまり夫)と会って貰えたのは、よかったな、と思っている。

スギ花粉の本拠地みたいな場所で、くしゃみは止まらなかったけど、天気が良くて、静かで、穏やかで良い墓参りだった。

 

出会いと対話、人たちの記憶。たくさんの人たちがさまざまな想いを抱えながらも、既定路線をただ走るのではなく小さなチャレンジと偶然と化学反応を積み上げながら、織り上げていくのが映画なんだな、と思える一冊。血の通った、丁寧な仕事。

昔一度だけ、とある映画のティーチインで、是枝監督に質問をさせてもらう機会があった。とても丁寧に答えていただいたことと、その内容はもちろん、手を挙げた時に「では、そこの赤いセーターのお姉さん」と、当ててもらったことまでなんか鮮明に覚えているのだった。今はなき、渋谷シネマライズでの話。

 

 

中学受験の失敗学/瀬川松子

風が強すぎて自転車で走ってても倒れそうになるし、ペットボトルは大量に転がってくるし、おばあちゃんはよろめいてるしでなかなか大変な町中。この前勇気を持って飛び込んだらとっても美味しかった、ローカルな感じのする台湾料理の店に12時ぴったりに入ったら他にお客さんいなくて、買い物から帰ったばかりのおかみさんが「も〜、笑っちゃうくらいの風だね〜」と話しかけてきたので、春風やばすぎるトークをした。うっすら、ずっと八角の香りがするお店。牛肉麺、美味いかった。現地の味っぽい。また行きたいな。お店にも、台湾旅行にも。

 

今まで読んでみた本とはかなり角度が違ったので、これはこれで面白かった。15年くらい前の本だから状況は改善していると思いたいが、どちらかと言うと悪化してるんだろうな、とも思う。不安を煽ってくる論法には気をつけたい。私は規格外のルートを通っている上、今の会社も学歴をあまり重視しないので「東京の競争社会がヤバい!」みたいな話にもあんまりピンとこない。いまいち事情が何もわからなくてホントすまんな、の気持ち。(だから本を色々読んでるっていうのもあるんだけど)何にせよ親は冷静に、だな。

個人的には英語ができると何かと便利だし楽しいので、ある程度の英語は習得したらいいなーと思っているけど、それは自分の内側に動機がないと難しいことだよなと言うのはわかっている。なので、色んな種をできるだけ、ささやかにまきたい。芽吹くかどうかは本人の意向次第なので、できるだけ関与はしない。

放課後の音符(キーノート)/山田詠美

TED Talkで聞いたLaurie Santosのお話がとてもよかったので、彼女のポッドキャストをフォローしてみた。The Happiness Labは、科学的な見地から、幸福感をテーマにしたポッドキャスト。めちゃめちゃ面白い。日本語コンテンツでこういうポッドキャストも増えればいいのにな。

www.pushkin.fm

この"不幸な億万長者"の回が興味深かった。宝くじで億万長者になった後、(よく聞く話ではあるが)家庭が崩壊して最後は自殺をしてしまった男性と、イラク戦争で大火傷を負って大きな障害を負ってもなお、それから20年経った今「自分は恵まれてる」というまでになった男性の話。そして"精神的免疫システム"の話。私はけっこう不安が強いタイプなので、この"精神的免疫システム"の概念を知ることができたのはよかったな。

 

今日は三日ぶりにウォーキングできた。夫が出張から帰ってきた。少し日常に戻った。のかもしれない。

 

20年以上ぶりの再読。

先輩(高校生)と先生との恋とか、今の倫理観ではNGな内容もあるけど、それはどうでもいいので子に読んで欲しい小説ナンバーワンでありながら、親が勧めて読むような小説ではない気もして、こっそり読んで欲しいなぁと思う。まあでも、勧めるかな。Bad girls go everywhere.