october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

恐山

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霊場恐山に行った。
4年前の夏の終わりのことである。

薄暗い、朝から小雨がぱらついている日だった。
霧が出ていて、雰囲気は十分と言ったところだろうか。

 

季節外れの恐山にはかの有名なイタコもおらず
無言で、賽の河原に詰まれた小石の山とお地蔵様の間をゆっくりと歩いた。
押しつぶされたような静寂の中で、思い出したように
鴉の鳴き声とかざぐるまが回る音を聞き
地獄からもうもうと湯気を立てる地面を見ながら
宇曽利山湖へとたどり着いた。

 

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エメラルドブルーの水面は美しいが、pH3.5の強酸性の湖。
ウィキペディアの記載によると
「湖の底部は全体的に平坦だが、1ヶ所だけ急激に深くなっているところがある。ただし、発見することは困難である。」
とのこと。それもまたどこか異界を思わせる。

 

生々しい悲しみの跡をそこここに見た。
だけど、誰も居なくて、とにかく静かだった。

黄泉の国があるかどうか、は重要ではないのだろう。
死者を想う場所というのは、生きる者のためにある。

 

当時の下北半島で覚えているのは
島の色んなところに枯れかけた紫陽花を見たこと。
北国は夏を迎えないまま、秋の気配がしていた。