霊場恐山に行った。
4年前の夏の終わりのことである。
薄暗い、朝から小雨がぱらついている日だった。
霧が出ていて、雰囲気は十分と言ったところだろうか。
季節外れの恐山にはかの有名なイタコもおらず
無言で、賽の河原に詰まれた小石の山とお地蔵様の間をゆっくりと歩いた。
押しつぶされたような静寂の中で、思い出したように
鴉の鳴き声とかざぐるまが回る音を聞き
地獄からもうもうと湯気を立てる地面を見ながら
宇曽利山湖へとたどり着いた。
エメラルドブルーの水面は美しいが、pH3.5の強酸性の湖。
ウィキペディアの記載によると
「湖の底部は全体的に平坦だが、1ヶ所だけ急激に深くなっているところがある。ただし、発見することは困難である。」
とのこと。それもまたどこか異界を思わせる。
生々しい悲しみの跡をそこここに見た。
だけど、誰も居なくて、とにかく静かだった。
黄泉の国があるかどうか、は重要ではないのだろう。
死者を想う場所というのは、生きる者のためにある。
当時の下北半島で覚えているのは
島の色んなところに枯れかけた紫陽花を見たこと。
北国は夏を迎えないまま、秋の気配がしていた。