october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

映画の生まれる場所で/是枝裕和

祖母のお墓参りに行ってきた。けっこう久しぶりだったな。前に行った時は3歳だった子が、今回は7歳。せっせと草取りや、墓石を磨くのを手伝い、お線香を備えて、会ったことがないひいおばあちゃん、ひいおじいちゃんに手を合わせて何やらむにゃむにゃ言っていた。孫たちは皆、ひ孫どころか結婚式すら見せてあげられなかったけれど、今年7番目のひ孫が生まれるみたいですよ、おじいちゃん、おばあちゃん。

祖母は東日本大震災の三週間前に亡くなったので、あれから13年、というニュース見出しを見て、もう亡くなってから13年か、と、併せて思い出す。亡くなる数日前に、婚約者(つまり夫)と会って貰えたのは、よかったな、と思っている。

スギ花粉の本拠地みたいな場所で、くしゃみは止まらなかったけど、天気が良くて、静かで、穏やかで良い墓参りだった。

 

出会いと対話、人たちの記憶。たくさんの人たちがさまざまな想いを抱えながらも、既定路線をただ走るのではなく小さなチャレンジと偶然と化学反応を積み上げながら、織り上げていくのが映画なんだな、と思える一冊。血の通った、丁寧な仕事。

昔一度だけ、とある映画のティーチインで、是枝監督に質問をさせてもらう機会があった。とても丁寧に答えていただいたことと、その内容はもちろん、手を挙げた時に「では、そこの赤いセーターのお姉さん」と、当ててもらったことまでなんか鮮明に覚えているのだった。今はなき、渋谷シネマライズでの話。