october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬

人間ドックに行った。健保の健診センターで検査着に着替えて、番号をふられたファイルを持って、あちらへこちらへと指示されるままに移動する。健診センターのスタッフの皆さんはいつ行っても優しくテキパキとしている。その間を流れる無数の灰色の(検査着を着た)体たち。みんな会社では偉い人だったり、新人だったり、出来る人だったり、サボり魔だったり、いい人だったり、意地悪だったり、色々するんだろうが、あの場ではただウロウロと流れる体になる。人間として丁寧に適切に扱われながらも、どこか人間味を失うのがなんとなく愉快に感じた。体重、体脂肪、復位ともになんとかキープ、食生活がろくに改善されなかったのに増えていなかったのは週1でも筋トレしていたからだろうか。体の内側の結果が出るのは3週間後。二年ぶりのマンモグラフィーは叫ぶほど痛かった。

 

オーディブル

エンタメ小説として読むなら面白かった。でもこれら(複数)の題材は、当事者ではない国で、あるいは立場で、エンタメ作品の一部として消費していいものなのかということの引っ掛かりがどうしてもあって、それは最後まで拭えなかった。そう単純なものではないとは思うが、主人公のセラフィマが美少女だということが強調されていなければ、もう少しすんなり読めたかもしれないな。

(それはそれとして)登場人物の中ではシャルロッタが特に良かった。イリーナとリュドミラの友情も良かった。最もグッときたポイントはセラフィマが、かつての家族写真に写っていた父は、わざと厳しい顔をしていたわけではなくて緊張していただけなのだろうと気づいたくだり。