october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

俳句の波がやってきた。

以前、ツイッターのTLにふっと流れてきたこの漫画。

本田先生の「ほしとんで
俳句ゼミの漫画である。

プロでもアマでも何かしらの創作で、書いたり描いたりしている人には刺さると思う。もちろん、グッサリ刺さった。そして早速1巻・2巻を買った。もうこれがめっちゃ楽しくて、本当に面白くて、そのまま本屋でうきうきと歳時記を買った。ぱらぱら捲って、楽しいなぁとは思っていたけれど、その時はまだ俳句を作るには至らず。長編小説(2次創作・11万字)を書き切った直後だったので、ちょっと脱力していたし。いいね〜俳句、気になるよね〜くらいの存在だった。

そして先日、3巻が出ていた。

ほしとんで03 (ジーンLINEコミックス)www.amazon.co.jp 614円(2020年06月23日 12:01時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する

これがやっぱもうめちゃめちゃ面白かった〜!の、だ。こんなに優しいタッチで、創作の痛い所や気持ちいいところをぐいっぐい付いてくるの、すごいなぁ。みんな大好きだけど、レンカさんと坂本先生が特に好き。

そして、俳句楽しい!!もっと俳句漫画読みたい!他にも無いかな?と調べて、そのまま流れるように「あかぼし俳句帳有間しのぶ 全6巻を読んだ。

あかぼし俳句帖(1) (ビッグコミックス)www.amazon.co.jp 605円(2020年06月23日 12:03時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する

正直、主人公(仕事を干された定年まであと5年のおじさん)のキャラがちょっと苦手な(特に1巻~2巻は超キツい)のだけど、もう一人の主人公でありヒロインでもある翠ちゃんがとても素敵で、他のキャラもみんなじんわり良くて好き。あと大げさではなく、さりげない所にたくさん名台詞が潜んでいて、趣味を愛する人、表現を愛する人、自分の"好きなこと"を愛する人の背中を、優しくまっすぐ押してくれるようなお話だった。

俳句のことがメインだけど、仕事、友情、芸術、夢、そして恋愛もちゃんと描かれていて、特に恋愛は特別なビックイベントではなく、脈々と続く人生の中で起こりうる営みの一つであるような取り上げ方がとても良かった。翠ちゃんとよつゆが好き。そして、常に俳句とともにある日常、素敵だなぁと。(なお、最初苦手だった主人公も、後半にはいい味出してて良かった)

そんなことを思っていたら、わーっと燃え上がる俳句熱と、一人時間が取れないことにより満たされず燻っている創作欲とが合体し、「おっしゃー!!俳句やるぜ!!」と、一気に火がついてしまったのだった。

火がつくと、とりあえずは本を読む。

夏井いつきの俳句ことはじめ 俳句をはじめる前に聞きたい40のことwww.amazon.co.jp 1,430円(2020年06月23日 13:28時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する

「夏井いつきの俳句ことはじめ 俳句をはじめる前に聞きたい40のこと」夏井いつき

夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業www.amazon.co.jp 1,540円(2020年06月23日 13:28時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する

「夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業」夏井いつき

夏井いつき先生はあのプレバトの先生なんだけど(親が大ファン)、「俳句の種まき」活動をされているそう。とにかく、ものすごく、俳句を始める心理ハードルを下げてくれる。すごい。「何かちょっと楽しそう」「私でもできるかも!?」「やってみようかな!?」「やってみたい!!!」と、気分が盛り上がった!何かやっぱりちょっと高尚な趣味のイメージがあったけど、もっとカジュアルに楽しんでいいんじゃん俳句!!

五七五で毎日が変わる! 俳句入門www.amazon.co.jp 1,430円(2020年06月23日 16:33時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する

「五七五で毎日が変わる! 俳句入門」堀本裕樹

こっちは「ほしとんで」の監修もされている堀本裕樹先生監修の本。漫画と本文両方でストーリーが進行していき、吟行→句会→推敲で、素人の俳句に先生が推敲を入れて行くんだけど、すごい分かりやすいし勉強になる。そして面白い。いいなぁ、吟行してみたい。そう思った私は昼休みにポケットにメモ帳を突っ込んで、スーパーに行くフリして30分一人散歩吟行もどきを結構した。目に映る全てのものがネタに見えて、楽しかった。小説だと集中モードに入って書いてそれなりの文章を整える作業をするのに、最小単位でも1時間は必要だけど、俳句なら30分で種を探して夕飯を作ったり寝かしつけしながら頭の中で作るのもできるのではないか……?

私が買った歳時記はこちら。(Kindle Unlimitedにも入ってた!)

増補版 いちばんわかりやすい俳句歳時記www.amazon.co.jp 1,485円(2020年06月23日 15:12時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する

「増補版 いちばんわかりやすい俳句歳時記」辻桃子 安部元気

見やすいし、分かりやすいし、ぱらぱらしてるだけで楽しい。

前から薄ら思ってはいたものの、改めて見てみると、季語はときめきと萌えとエモの宝庫である。さりげなーく小説のタイトルや本文に織り込んだらめっちゃ素敵になる語彙がいっぱい。夏の季語だけ見ていても「五月闇(さつきやみ:五月雨のころの暗い昼や、月のでない闇夜)」とか「夏の果(なつのはて:日中はまだ暑いが、朝晩は涼しくなる頃)」とか「シトロン:サイダーのこと」とか、とにかくグッとくるのだ。昔から色んな人がグッときていた言葉の集大成ともいえるのだから、当然とも言えるけどね。

そして俳句は、エモの瞬間の標本というか。ポケットに収めるエモというか。十七字で再現可能なエモというか。(すごい俗っぽい表現をしていてすみません……)なんか「作品を作る!」と意気込むよりもう少し気楽に触れて、その瞬間を留め表現するものなのかな、と。散々言われてることだろうけど、気持ちの篭った写真のような、言葉のInstagramみたいな……そんなイメージで。

しかしいざ自分でやろうとすると、気楽ではあるけど全然簡単じゃない。5、7、5に言葉を当てはめて作ることだけなら、そんなに難しくないんだけど、「だから?」になっちゃう。中身がないというか。エモどこいった?ってなる。なんか風を掴もうとするみたい。楽しいんだけど、難しい。で、改めて例句に載ってるグッとくる俳句を読むと、ウワァ!ってなる。見ている世界の解像度も違えば、それを言葉に落とし込む巧みさも凄すぎて目を見張る。

鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし 三橋鷹女

(鞦韆(しゅうせん)=ぶらんこ 春の季語)

たった17字でこんなときめき大爆発みたいな世界を展開できるの、素敵だーーー!!やっぱり私は言葉が、文章表現が、詩が好きだ。と、しみじみした。もちろんいきなりこんな世界に行けないことはわかってる。いきなりっていうか、一生かかっても難しいだろう。でも、せめていつかその片鱗を触れることできたらいいなと願いながら、まずは一歩、練習から始めたい。日常のあらゆる所でネタを探すのは楽しいし、歳時記をパラパラ捲るのも楽しいし、パズルみたいに言葉の組み合わせを考えるのも楽しい。そして小説を書くよりは隙間時間でできる。でも句を詠んでいくことは描写力の鍛錬になりそうだし、言葉を選ぶために頭をフル回転させる時間を増やすことは、字書き力の修行にもなりそう。語彙も増えるだろうし、何より、楽しいのでもっとやりたい。

手探りなので、まずは作ることに慣れる為に、俳句SNSアプリ「俳句てふてふ」で一日一句を目標に詠んでいく(noteと同じ名前・アイコン)。続いたら月1くらいでnoteにまとめ記事にしたい。

俳句てふてふwww.tehutehu.com

いつか句会に出てみたいし、吟行句会もやってみたいな〜。俳句やっている知り合いのいない初心者は、一体どこに行ったらできるのか……。

歳時記の例句から好きな夏の句を幾つか。

ソーダ水べつに何にもない二人 ほりもとちか
五月闇まなこ凝らせば海であり 佐保田乃布
通り抜けだけのデパート土用東風 鈴木真砂女
麻を着て齢を秘することもなし 池蘭子
冷奴滅私奉公なんて嘘 中島鳥巣
水底に横たふラムネ夜の色 菊地のはら
夫婦らし酸漿市の戻りらし 高浜虚子
ハンケチ振って別れも愉し少女らは 富安風生

Coccoのアダンバレエに収載されている曲「卯の花腐し」ってまるごと季語だったんだな〜。そんな発見もまた楽しい。

卯の花腐し(うのはなくたし) 夏 天文
卯月の頃のうっとうしい雨模様。卯の花を腐らせるように降りつづく。


ちなみに。
小説に関しては、久々に6月のTOBE小説工房は提出できた。やっぱり今年も長編を出すのは諦めたくないので、書きかけのやつから何とかしたい。あとは10月に一本、去年も出した短編の賞に今年も応募します。