october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

極悪マーチがきた話

www.youtube.com

極悪マーチがやってきた。

 

これは昨夜しれっとYoutubeCocco公式チャンネルにアップされた、去年の年末のStar Shankツアー東京公演(東京国際フォーラムAホール)の1曲である。もうすぐライブ円盤が出るので、その宣伝の一貫だろう。

Star Shankツアーには名古屋公演と東京公演に行った。東京公演はまさにこのアクトをけっこう前の方で見ていて、色んなものが吹っ飛ばされた。しかし、まさかアップされるとは思わなかった。だって極悪マーチって、あのツアーのメインディッシュじゃん!(私見です)

アルバムStar Shankの双峰の一つである極悪マーチは、そのあまりに直球過ぎるタイトルが逆にちょっとコミカルさも感じさせるが、おっとどっこい楽曲はストレートに正統派、王道ラスボス系サウンド(語彙よ……)むしろマーチがそのラスボス感を加速させている、最高に禍々しく美しい楽曲です。なのですが、このライブツアーではガラッと編曲を変えてきた。音楽用語には詳しくないので、そのへん正しく描写はできないのですが、とりあえず観てもらいたい。私は「そうか、これがこの曲本来の姿なのか」と、納得し、腑に落ちた。あっという間に飲まれてしまう。もう、ここまで来たら抗えない。怒涛に溢れだす感情の大きさ。ただの憎しみとも違う、純粋な悲しみとも違う、ありがちな怒りでもない、なんかもっと大きな、そう。なるほど……これが"極悪"か。

極悪のエッジへ、手を伸ばすその姿は禍々しくて神々しくて美しい。
所々で零れる幼く拙いような声すら、恐ろしい。
息を呑む。息を止める。極悪に飲まれて、その一部になる。
あー、本当にCoccoは丸くなっても居ない、牙は抜かれていない、ずっとそこにあったのだ。
(知ってた。知ってたけど)

でもさ、毎回思うんだよね、ここまでだとは思わなかったって。
飲まれに来てるのに、それでも、「こんなはずじゃなかった」って。
それこそ、被食される側の浅はかな、そして圧倒的な陶酔として。

Star Shankは、歌手を辞めてアクセサリー職人に弟子入りしたCoccoが「シャンク」というパーツを繋ぐ技を正しく覚えたことで、今まで中途半端に投げ出していたパーツを上手く繋げて完成できるようになった、そうしたら、歌も今までばらばらとパーツだったものが「今だから」繋げるようになった……という所からできたアルバムで。

「極悪マーチ」という曲名は、2001年に発行されたSwitchの中に出てくる。もはや伝説となっている2000年のツアー、9カ所11公演の、松山公演のCoccoのメモの下に。今の歌とは全然違う歌詞。可愛らしく、どこかコミカルで自虐的、そしてむき出しの悪意。もしかしたら、今の極悪マーチとは全然違う歌なのかもしれない。たまたまタイトルが同じになったのかも?だけど、もしかしたら……この二十年以上抱えてきた種を、パーツを、一つの歌に繋ぐことができたのは今のCoccoだからなのかな……という妄想まで膨らむ。(なお、どのSwitchだか記憶が朧げだったのでキモファン仲間に聞いた!教えてくれてありがとうだぜ)

セットリストではこの極悪マーチから、2.24、Come to meと禍々しさと憎しみが破裂した所で、魂が浄化されるような音速パンチへと続いていく。いやもうほんとStar Shankはありとあらゆる感情(かっこいい!こわい!きれい!怖い!!!美しい!かわいい!ぎゃわいい!!!!いとしい……切ない……)が爆発する素晴らしすぎるライブツアーだったので、是非、何卒、ライブツアーDVDで堪能して欲しいです。

個人的には、今の40代のCoccoが、まるで10代の自分を思い出し、慈しみ、大丈夫だよって語りかけるように歌うRainingに改めて胸を打たれた。そして涙なしには聞くことはできない、海辺に咲くばらのお話も……。

Star Shankライブツアー、ブルーレイ&DVDは来月発売だよ~!