october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

教育/遠野遥

内側から少しずつめりめりと春がやってくる。

8月に伊豆旅行に行った時にもらった大量の宿泊料還元クーポンの期限が切れてしまう為、再び伊豆旅行に行ってきた。系列ホテルだ。8月はとてもじゃないが旅行に行くなどと言える雰囲気ではなく、黙って行ったのだが、その時より感染者数はずっと多いのに、今回は普通にブログに書いているのが変な感じ。どっちが変なのかはわからない。社会の感覚が変わっているのか、それとも私が8月に比べてツイッターアカウントを減らしたから感じ方が変わったのかな?いろんな感じ方があって、いろんな温度感があり、いろんな危機感があり、みんな自分のことに手一杯なだけなのに、勝手に圧を感じたり、敏感になりすぎたり、被害者意識を拗らせてしまったりすることがある。ので、今年もSNSとの距離感はちゃんと保っていたい。今の世界情勢にまつわることでも、同じようなことを考えている。振り回されたくないので情報ソースを新聞に絞っているが「これは報道されてないけど」ってツイートで回ってくることは、実際は大体報道されている。簡単な要約や、安直な断言に振り回されることは本当に無意味だと感じる。

 

f:id:tpb_kotori:20220301164003j:plain

伊豆は楽しかった。お風呂に入って伸び伸びした。
iPhone 12 miniのナイトモードは、昼間みたいに撮れる。

 

「この学校では、一日三回以上オーガズムに達すると成績が上がりやすいとされていて――」
勝てば天国、負ければ地獄の、規律と欲望が渦巻く学校――私の幸せは、正しいのか?
人間の倫理を問う、芥川賞受賞第一作。

文藝秋号。

成績の為に一日三回以上のオーガズム推奨学園という、キャッチーな設定に惹かれて読んでしまった。軽やかにキャッチーにイカレている。セックスも(物理)暴力描写もわりとあっさりとしていて、必要以上のボディブローを感じず読めるのも良い。(この感じ方には個人差はあると思うが)

Amazonの作品紹介に書いてあったように、この作品が人間の倫理を問うていたかはわからないのだが(個人的には特になんにも問うていないように感じた。大昔から存在していてこれからもそこにあるだろうものをデフォルメして丁寧に描いているように受け止めた。こういう人いるし。いっぱいいるし。)、抑圧の下で空っぽになった人間にとりあえず文字だけを詰めていくとこんな感じになるのか、というのがとても面白かった。文藝のコピーに書いてあった「無意識過剰」という言葉がしっくりくる。空虚。血の通った思考の大半が鈍麻・退化した中で上澄みだけがピルピルピルピルって動いている。それがどんどん悪化していく。低空飛行の思考停止の上で踊っているだけの存在に成り果てる。シャープペンシルを持った真夏の意図を主人公が掴めなかった時に(真夏との関係ではなくすべての意味で)もう戻れないところまで来てるとわかる。

本筋と関係なく、脈略なく始まる、未来の催眠術の中の話(特にお化け屋敷のが好き)、ヴェロキラプトル、真夏の芝居、あとはノゾミのインタビュー。そうしたサブプロットの中には、血の通った命が描かれている、ということが描かれている。遠い。

人間的でまっとうな感覚(他に表現が浮かばない)を持っている真夏、海、未来が下の名前で呼ばれていて、他のキャラクターは苗字で。主人公を名前で呼んでいたのは、真夏だけだけど、それにはきっと気づいていないんだろう。

この「井」はレベル感は違えど、実在するし、むしろこんなものばかりな気がしている。

あなたはどの井戸にいますか?
わたしはどの井戸にいますか?

海獣学者、クジラを解剖する。/田島木綿子

3回目のワクチンを受けた。1、2回目は職域接種・モデルナだったけど、今回は近場でファイザー。サクサク進んであっという間に終わる。2回目の時はけっこう熱が出たので、今回は副反応が出ないといいなぁと思っていたのだけど、やはり翌日は38度を超える熱が出て、2回目ほどではなかったが、倦怠感や頭痛はありなかなか辛かった。コロナに罹るよりはずっといいけど、でも今後これを半年ごとに繰り返すのは嫌だなぁ。今日はやっとちょっと回復。そろそろほんとジムに行きたい。来週後半かな。

 

Kindle

クジラを含む海洋生物のストランディングは、海岸線のあるところならどこででも起こる。日本は四方を海に囲まれており、世界のクジラの約半数が近海に棲息または回遊していることもあって、年間300件近くのストランディングが報告されている。あくまで報告件数なので、人知れず流れ着いて海の藻屑となっているケースを含めると、もっと多いだろう。

ストランディングという現象は知っていたけれど、言葉は初めて知った。そしてこんな日常的(ほぼ毎日)に起こっていることだというのも。なんとなくクジラは遠い国にいるもののようなイメージがあったけど、そんなこともなかったらしい。シロナガスクジラだって、近くにいるらしい。

海の哺乳類に対する著者の情熱と愛情が半端なく、でもとても読みやすい文章で、色んな海の哺乳類の話から、具体的な解剖の話やコツまで、とにかく読み応えのある本だった。

女が死ぬ/松田青子

あつこお姉さんが卒業するらしい。とっても寂しい。この前、4月から番組編成でおかいつが6時代に移動すると聞いた時、キャスト変更の発表はなかったので内心ほっとしていたのに。だいすけが9年、たくみお姉さんも8年だから、あつこお姉さんももう2年くらいは大丈夫なんじゃないかと思ってた。でも6年も十分長いよね。ライフステージの変更もあるだろうし、仕方がないことなのかもしれない。うっうっ、大好きだったよあつこ……。食いしん坊キャラのあつこ……せっかく今期のプリキュアがあつこっぽいなと思っていたところだったのに……。

ガラピコぷ〜も終わってしまう。あのKURUTTA世界観が……。全タッチパッチ回をまとめたDVDを作ってほしい。

タッチパッチさん - Google 検索

 

Kindle

「女らしさ」が、全部だるい。天使、小悪魔、お人形……「あなたの好きな少女」を演じる暇はない。好きに太って、痩せて、がははと笑い、グロテスクな自分も祝福する。一話読むたび心の曇りが磨かれる、シャーリイ・ジャクスン賞候補作「女が死ぬ」を含む五十三の掌篇集。『ワイルドフラワーの見えない一年』より改題。〈特別付録〉著者ひと言解説

ショートショート(0字!)からショートショートまで、色々入った気持ちの良い短編集。ジャンル分類が難しいけど、SFに入るのかな?どれも風刺が効いていて、全体の勢いがすごく、軽やかで、大胆で面白い。あまりに好きすぎて始終にやにやが止まらなかった。

特に好きなのと一言感想。

  • あなたの好きな少女が嫌い ←わかる、良い、良い楽園だそこは……
  • 神は馬鹿だ ←わかるww
  • 女が死ぬ ←とってもとってもとっても好き。ヴァギナはヴァギナ。
  • パンク少女がいい子になる方法 ←わかる。可愛い。
  • いい子が悪女になる方法 ←わかる!最高。
  • We Can't Do It! ←全力で叫びたい!!!
  • ハワイ ←私も行きたい
  • この国で一番清らかな女 ←一番好きかも。ラストが最高。
  • ケイジ・イン・ザ・ケイジ ←おバカwwww
  • 男性ならではの感性 ←日本人読んでほしい
  • 履歴書 ←あるあるで悲しい
  • 父と息子 ←良い(涙)
  • 若い時代と悲しみ ←とても良い。
  • 文脈の死 ←好き。

三体/劉慈欣

「いつか土星に行きたいから、ママついて来てくれない?」と、子からお誘いを受ける。こんな素敵なお誘い、一生のうち何回あるだろう。「もちろん行くよ」と答えたけれど、土星に行くには木星を通過しなければならない。私は木星がちょっと怖い(大き過ぎる)。土星には空気がないことを教えると「がんばって宇宙ステーションを探さないとね」と言う。そもそもどうやって土星に行く想定なのかよくわからないけど、頑張ってほしい。私はジェットコースターが苦手で訓練がつらいので、訓練不要の宇宙旅行の時代が来ているといい。

 

身近な所で感染例が毎日のように出ていて、明日は我が身の綱渡りをしている気分。いつその日が来てもいいように備えを始めた方が良さげだなと思う。

 

オーディブル

中華SF。二年くらい前に読んでたのだけど途中で難しくて詰んでしまっていたので、オーディブルが聞き放題になったこの機会に読み直しならぬ聞き直し。前情報を全然入れていなかったので、途中から、え、そういう方向に行くんだ?という純粋な驚きがあって、面白く、楽しかった。が、正直科学的な話の部分は付いていけなくて後半(特に智子のあたり)は、宇宙猫になっていた(宇宙だけに)。宇宙猫状態でもオーディブルなら勝手に読み進めてくれるので、本で読むより聴いてよかったと思う。(何度か巻き戻して聴いたけど)

キャラクターで一番好きなのはイエ・ウェンジェで、特に静かなる絶望と諦念の中で生きていた若い頃の彼女が、柔らかいものに触れる度に何かが動きそうになり、しかし動かない、その様がとても悲しかった。

色々忘れそうだから、早いうちに2に手を付けなければ。