october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

葉月の俳句+自分の句の添削してみた。

7月中に発生した台風がゼロで今年は冷夏だなんだと言われたが、梅雨が明けてみれば連日ひっくり返りそうな猛暑だった。7月から減らない感染者数に怯えつつ、いつもはまとめて一週間ほど取る夏休みを分散させて毎週金曜日に入れ保育園を休ませた。週5タスクを週4でこなして回していたのでそれなりに仕事も忙しく、金曜は休みだからと行ってどこに遊びに行けるわけでもなし、ゴーヤは二つしか実を付けず、ミニバラのグリーンアイスが暑さに負けず咲いているのを唯一の楽しみにして凌いだ夏だった。子は相変わらず熱を出すし、色々と疲れ果て夜は寝てしまい、朝も起きれず、句作も文章も進まず、noteの更新も止まっていた。でも9月に入った途端に少し過ごしやすくなったので、そろそろ動き出したいなぁと思う。夏がひと段落した今、流石にこの半年で増えすぎた体重はいくらコロナを言い訳にしていても減ってくれるわけではないと気付き、本格的に減量を始めることにした。あすけんにちまちま食事をインプットし、昼休みにはリングフィットかフィットボクシングをしている。いつまで続くかな。


葉月の俳句

さて、上記のような状況だったので、てふてふに投句できた8月の俳句は数が少ない。また、ネット句会や角川俳句にも投句することにしたので、毎日投句できるかはわからないが、それでもできるだけはしていきたい。投句数は18句、トータル878いいねで現在2級。一番高かったのは17いいね、低かったのは7いいね。


冬瓜に籠って暫し休みます

17いいね。冬瓜は秋の季語。冬まで保つから冬瓜という名前で、夏の野菜なのに秋の季語というのが何だかおかしい。生協で買った丸ごとのミニ冬瓜が「このままだと冬まで保つんだよなぁ」と思いながらキッチンに起きっぱなしにして2週間放置していた。中は柔らかで似るとちゅるちゅるつやつやとろとろになるのに、皮は鮮やかな緑のまましっかり固い。でもごわごわした所は無くて、優しい強さ。あ〜、疲れたこの中に入って守られたい……と言う心の表れでした。


秋の朝スコーン二つ温める

17いいね。椿山荘のスコーンを手に入れたので、少しだけレンジとトースターで温めてみた。8月の終わりは、俳句だともうすっかり秋である。


ねこじゃらしスッと採れるのとれないの

15いいね。保育園からの帰り、毎日毎日道ばたに生えているねこじゃらしを採って採ってとせがまれる。自分でとりなよと言いながらも、引っ張ってみるとスッと採れるのと、固くて全然採れないのがあることに気付いたので詠んでみた。季語はねこじゃらし(秋)。


掃除中こんなとこからねこじゃらし

14いいね。毎日ねこじゃらしを持って帰るので、家のどこかに落ちている。もちろん見つけたら拾って捨てているが、掃除してたら洗面台の下の奥から出てきたので、おやおやとおもった句。


君の居ぬグリーンカーテン夏来る

14いいね。グリーンカーテンでしばらくあおむしを飼っていた。アシナガバチが頻繁に偵察に来るのだが、あおむしを狩るためと聞いていたので、あわよくばアシナガバチVSあおむしバトルが見れるのでは!?という残酷な下心があったのである。しかしあおむしがでかくなりすぎたのか、アシナガバチは興味をしめさずふうせんかづらの花の蜜を舐めるばかり。あおむしはのびのびと過ごしていたが、7月の終わりにグリーンカーテンになっていたなけなしのゴーヤを齧っているのを発見し、駆除された。そしてその翌日に梅雨が明けて、夏が訪れたのであった。あおむし、ごめんな。ゴーヤは齧った所を除去して、ちゃんと食べました。小さかったけどちゃんとゴーヤだった。

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自分の句を添削してみた

さて、句作を始めて3カ月、独り相撲で書いていても良いのか悪いのかあまりわからず、どうやったら上達するのかもわからないし、少し悩んでしまった。俳句雑誌や、気になった俳人の句集などを読んでると、ひっくり返ってもこんな風に詠めないけど、でも詠んでみたいし、上達はしたい気持ちはある。コロナ禍じゃなければ句会に参加してみたいが、流石に今はちょっと難しそう。なので、句作を始める前に読んだこの本を再読して、過去の自分の半端な句を推敲してみることにした。

五七五で毎日が変わる! 俳句入門 www.amazon.co.jp 1,430円(2020月09月05日 23:01 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する

五七五で毎日が変わる!俳句入門 堀本裕樹

この本は、実際行った吟行句会をベースにして、句の添削をしながら俳句技法の解説をしているのでとてもわかりやすい。前に読んだ時はまだ句作をしていなかったので、さらっと読んでしまったが、今読むと改めて「な、なるほどー!」となる点があって、面白かった。

「暗い印象の内容」には「明」のイメージの季語を、「明るい印象の内容」には「暗のイメージの季語を使うと、コントラストが生まれる。(Lesson 2まとめより 35P)
言葉選びが説明的で音数を無駄にしていないかチェックする。(Lesson 4 まとめより 63P)

このあたり、なんとなくわかっていたつもりでも見返したらなんじゃこりゃーってなってるのがたくさんあった。

添削① アガパンサス異界を覗く無数の目

文月の俳句にも登場したこの句。季語がないのが気になっていた。(アガパンサスは季語じゃない)また「異界を覗く無数の目」がちょっと説明的な気がする。それにそもそも「アガパンサス」で上五が字余りである。なので、ここは「アガパンサスは異界の目」にしてしまい、上五にしっくりくる季語を探すことにした。

上記のアドバイスを元にすると「アガパンサスは異界の目」はちょっと不気味で暗い感じがするので明るめの季語を持ってくる方がよさそう。でも、この不気味さというか、重さみたいなものは大切にしたい。アガパンサスは夏の花だし、私は切り花からイメージを得たが、本来は外(庭や玄関先)に咲いていることが多いので、強すぎる日のイメージを当ててみることにした。

日の盛りアガパンサスは異界の目
炎天やアガパンサスは異界の目

うーん。炎天や、のほうが良い気はするけどまだなんとなくピンとこないな。と歳時記をぺらぺらして、見つけたこちら。

大西日アガパンサスは異界の目

「西日」は夏の季語。強くて暑くてべったりと重い、そんなイメージ。大西日だと、更にそれが強くなる。逢魔が時に繋がる午後の時間帯だから、異界のイメージとも近いし、何かちょっと迫力もある気がする。夏の午後、暑すぎて誰も外を歩いていない住宅街の隅っこに無言で咲くアガパンサス、強い西日の下で影も濃い……というイメージ。うん。ということで、これにしました。元の句よりは良い気がする。


添削② 梅雨寒に黄色き雄花男子校

これは個人的にはめっちゃ気に入っていた情景を詠んだ……つもりなんだけど、全然しっくりこないな。梅雨の間にせっせと咲き出したグリーンカーテンのゴーヤの花が、雄花ばっかりで全然雌花が付かないので「これじゃあ男子校だな」と思った句。でもゴーヤが秋の季語だったので、夏の季語のほうがいいのかな……と無理矢理、梅雨寒を入れた。「黄色き雄花」にすればゴーヤの花だってわかるかな、と思ったのだ。でも今見返すと、そこまで説明する必要はなかったかもな。苦瓜も入れてしまっても良いかも。

苦瓜や雄花ばかりの男子校

うーん。男子校、って……思いついた時は「これだ!!」ってなったけど、入れなくてもいいかも。雄花ばかりと、男子校って何か言ってることが被るし。あと苦瓜やにしてしまうと、これはこれで説明的な気もする。なので、やっぱり夏の季語に戻すことにした。

夏の露雄花ばかりが咲きにけり

季語の夏の露は、夏の草や緑に付く朝露のこと。爽やかさやフレッシュさを入れてみた。男子校は外して、切れ字にしてみました。少なくともこの方が句としてはさっぱりしたんじゃないかな。


添削③ 夜深し遠くにサイレン我ビール

説明し過ぎだし、三段切れになっている(夜深し/遠くにサイレン/我ビールと3カ所で切れること。基本的にはあまりよくないとされる)。そして何より意味がわからない……。

これは、家族が寝静まった深夜に一人でぼんやりビールを飲んでいたら、遠くに救急車のサイレンが聞こえて、ぼんやりしていた時の句。ただその詩情がまったく出ていないと言うか皆無だな。季語はビールなんだけど、これはビールの良さが出る句ではないので、他の季語にしたほうが良さそう。夏の夜と迷ったけど、梅雨闇にしてみた。

梅雨闇やサイレン聞いてひとり酒

これだとわざわざサイレンを聞いて飲んでいるような、そして酒がメインのような感じがしてしまうので、あんまり「ぼんやりしていた」感じがでないなぁと。

梅雨闇に微酔いで聞くサイレンや

言葉と語順を変えて、切れ字の「や」をサイレンにつけてみた。良い句かどうかは別として、自分の言いたかったことには近付いたかなと思います。


添削④ 黒南風や戸廊下窓へ小嵐

黒南風はくろばえと読む夏の季語。嵐が来る前のような不穏な風のこと。うちはマンションなんだけど、風の強い日にリビングの窓を開けたまま、玄関の扉を開けると、家の中に強い風が吹き荒れて扉がバタバタしまったり、カーテンがばっさばっさと膨らんだり、暴れまくるので、そのよう様子を言いたかった。でもめっちゃ説明になってるし、イメージもピンとこないね。

ひとまず「窓に押し入る黒南風や」にして、上五に合う言葉を探したけど、やっぱりしっくり来るのがない。ので、元に戻してシンプルにしてみた。

黒南風や部屋の中にも小嵐

んんー。これよりは。

黒南風や家の中にも小嵐

こっちの方が自分のイメージに近いかな。でも何かもっとピンと来るのがあるはずとは思うけど、とりあえず今日はこれで。


添削⑤ 何食べる?ねこじゃらしマイク得意顔

自分で言うけどめちゃくちゃ意味不明じゃないですか、この俳句。これは、3歳の子がねこじゃらしを片手に蝉のぬけがらや、カマキリに向かって「食べ物は何が好きですか?」とインタビューして遊んでいて、それが可愛かったので俳句にしようと思った、のだけど……。ちなみに最初は「カマキリにねこじゃらしマイクインタビュー」と考えたんだけど、カマキリもねこじゃらしも季語で被るのでNG。そして色々とコネコネした結果が上の句である。誰の得意顔だかわからないし、ねこじゃらしマイクも意味不明だし、何食べる?って何のことだ。

これはもう子どものことだと書いた方がすっきりするかも。

三歳の取材マイクはねこじゃらし
三歳の取材の友はねこじゃらし

うん。まだ、最初の句よりは意味がわかる気がする。でも取材とマイクって両方いるかな……と思って取材の友にしてみたけど、意味がわからなくなっただけだった。

ただこれだと、三歳の取材マイクがねこじゃらし、だからどうした……と自分のツッコミが入ったので、もう少し動きを出してみた。

三歳児ねこじゃらし手に取材中

これならまだ「どうですか?どうですか?」と、食事中のカマキリにねこじゃらしマイクを突きつけていた子の姿に近い気がする。三歳児って言わなくても良いのかもしれないけど、三歳くらいの無邪気さと取材の真似をしたがる所を入れたかった……。

添削後の俳句が良い句かどうかはさておき、元の句よりは俳句として体を成したのではないかと思う。本当は最初から此処まで推敲してから投句すればいいんだろうけど、そうするとなかなか考え込んでしまって句を作るハードルが上がり、やらなくなってしまうと思うので、一先ずはフットワーク軽く作って、振り返ってセルフ添削するという形にする。


今月の好きな俳句

ふらここの夕べ幼き哲学者
山田牧

山田牧さんの句集「星屑珈琲店」が本当に良かったので、そのうち別にレビューを書きたいと思う。

秋蝶や不意に流るるジムノペディ
山田牧

これも上記の句集から。この句を読んだら、ゆったりと頭の中でジムノペディが流れ出した。あいつ不意に流れるよね、わかる……。

切株を抑へ込みたる西日かな
片山由美子

西日という季語が好きかもしれない。

珈琲を濃い目に淹れし晩夏かな
好摩

しみじみわかる。

冷房の部屋に消毒液があり
仁平勝

コロナの夏。

そびえたつたましひ色の雲の峰
松尾隆信

色んな雲を見た夏でした。

忘られて人は二度死ぬ花石榴
広渡敬雄

花石榴という季語にハッとした。

間違へて秋風と手をつなぎゐし
後藤比奈夫

角川俳句9月号の後藤比奈夫追悼特集から。妻を亡くした後の句ということで悲しみの深さがすごく……うおおとなった。

二匹目も妻が殺せし百足虫かな
西やすのり

これも妻の句。好き。笑

角川俳句、締切を間違えてしまって、8月号のハガキは出せなかったけど、できるだけ投稿していきたいな。

最近は句集も色々読んでるので、その感想もそのうち。

俳句、飽きるかなぁと思っていたけど、うおおおと思う句に出会うたびに、深みに嵌っていってる感じがある。楽しい。