october notes

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もう自分をデブとは言わない話

 「デブ」ほど、日常に溢れ返っていて、何十年も廃れもせず、今も昔も相も変わらず人々を呪い続けている言葉はないんじゃないかと思う。リアルでもネットでもテレビでも色んな場面で色んな使い方をされており、愛をこめて言われる場合もあるが、大体においては罵倒、悪口もしくは卑下の言葉になる。

だがデブに明確な定義はない。肥満は定義がはっきりしているが(BMI25以上、日本の場合)、デブはない。身長はみんな違うから体重の話をしても仕方がないし、むしろデブと言われてしまったらデブだ、みたいなところがある。あるいは「痩せていなければ」みんなデブだ。そして、自分がデブだと思ったらデブだ。女性の場合は、特に。私も思春期以降何度もダイエットをしては挫折するを繰り返してきた。

確かに、決して痩せてはいなかった。私は10代を海外で過ごしたのだが日本にいる祖母から送ってもらった雑誌のセブンティーンを読みながら「日本にいたらこの太い脚でミニスカートをはかなきゃいけなかったのか、よかった……海外にいて……」と呟き、砂糖いっぱいのネスティー(ピーチ)を毎日2缶飲んでいた。甘味のない飲み物は好きじゃなかった。フライドポテトも毎日食べていたし、ヴルストもよく食べた。

BMIは23.83で肥満(25以上)までは行っていなかった。とは言え、友だちはみんな細かったので自分はデブだと自覚していたし、外見にコンプレックスをもっていた(これはまあただの思春期あるあるだが)。

18歳で帰国してもう少し年代上のおねえさん雑誌のダイエット広告を見ると、人生最悪期!などと書かれているビフォーの体重が自分とほぼ同じだった。2000年前後のことだ。「お前は痩せなければ人生終わる」と言われてるみたいですごい嫌だった。で、そこからダイエットをして少しだけ痩せた。美容体重からは程遠かったが、スカートは履けるようにはなった。そして、そこらへんの体重から大体+5キロ〜−3キロくらいの範囲で、ずっと来ている。

多分最大の頃でBMI24前後(妊婦時代除く)、最も細かった時期は(最大瞬間風速的に痩せた結婚式前後の)BMI19ちょい。
今はBMI22.8くらい。コロナの引きこもり生活になって3キロ増えた。

ちなみにBMIとはBody Mass Indexのことで体重と身長から計算する、肥満度を表す体格指数だ。計算式はこちらにある。
標準体型は、BMI18.5~25の間。
そして日本肥満学会はBMI22を標準体重、統計上最も病気になりにくい体重としている。

私は医療に関連している業界の隅っこで働いており、業務で海外と日本の医療事情や医療制度を調べたり比較をしたりしている。

日本肥満学会ではBMI25~30未満を肥満(1度)としているが、WHOの判定基準ではもう一段階上の30~35未満が肥満(1度)で、25~30未満は前肥満となる。そしてアメリカでは成人の4割近くが肥満とされているが、その基準はWHOの方、つまりBMI30以上。なので、アメリカでは日本の基準に合わせると、おそらく国民の半分以上が肥満ということになる。

日本にはあまりいない重度の肥満の人口も多いし、病気として治療対象にもなっている。アメリカでは抗肥満薬はダイエットという軽い響きではなく、もう少し重い、命を落とす疾患に対する治療……という位置づけで研究開発されている。(そして、アメリカの肥満問題は(特に)貧困や格差の問題と切り離すことが出来ない。別の話になるので、ここではこれ以上深くは触れない)

が、やはり、そう考えると日本は標準体重を保てている人が多い。そして実際、統計的に健康である数値の範囲にいるのであれば、それで万々歳じゃないかと思うのだ。

健康に問題がなくBMI18.5~BMI25の間であれば、自分が快適に過ごせる体重で過ごしたらいいじゃん。

ダイエットしたきゃしたら良いし、自分の理想に近づけるのは自由だけど、別にいちいち自分のことデブだの太ってるだの言わなくていいじゃん。

と、いうことだ。

私はBMI22強で美容体重からは程遠い。でも自分をデブとは言うのも、思うのもやめた。自分の体型を人に説明する必要がある時には中肉中背と言う。

子どもの保育園の同じクラスのお母さんたち(みんな細い)の中では、相対的には太い。でも、だからどうした、と思う。恥ずかしいともヤバいとも思わない。

これから体重が増えてもBMI25を超えなければ「太っている」とは言わないようにする(もちろん超えたら「肥満だ!」と事実を受け止めるしかないが)。特に「デブ」は自尊心を削る言葉で、本当にギリギリまで追い込みたいときには有効かもしれないが、やはり責められるべきではないことに対して、そうした言葉でハッパをかけることは健全ではないと思う。

で、私は自分をデブとは言わないが、現在はダイエットをしている。
体脂肪率コレステロール値が高いので下げたい。そして自分が快適に過ごせる=自分が気に入った服を自分が着たい形で着ることができる、と言う所までは適度に身体を絞りたい。フレイル予防に運動習慣も付けたい。

でも本当に適度でいい。美味しいものも食べたいし、おやつも食べたい、お酒も飲みたい。そんな自分をダメだとも言いたくない。ダメじゃない!
痩せたらあれをしよう、とかも考えない。したいことは今もしている。
タイトなジーンズに戦うボディをねじ込むことは出来ないが、だからどうした。緩いジーンズを履いたって戦える。あと別に戦わなくてもいい。
ノースリーブから覗く腕が多少むちむちしていようが、人から文句を言われる筋合いはない。
むちむちの腕を人前に晒しちゃいけないという法律はないのだ。
目障りだ、なんて言ってくる人の方がただの迷惑クソリプ野郎ではないか。

これは甘えでも開き直りでもない。むしろ人生を快適に過ごす為の戦略だ。
こんな世知辛い世の中で、頑張って生きてるだけで偉いのだ。

心も、身体も、健やかな状態でいるのが一番だ。その為に認識や言葉使いをちゃんと改めましょうという自分への誓いでした。

 

※相対的に太った、痩せた、という言い方はする。でも「(半年前に比べて)太った」と「私は太っている」は意味が全く違う。

BMIは万能ではなく、標準体型でも体脂肪では肥満と言うことはあるので、そこは注意だと思う。