october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

それでも続ける(原稿日記)

先日泣き言を書いたが、あの泣き言が出てきたことが山場である(山場までこれた)ということの証左であった。まだ終わってないんだけど、予定より早くここまでこれた、という所にいる。山のものとも海のものともわからない物語をこねこねペタペタしているのはなかなか苦しく、だけどやっとここまできてその顔がわかってきて、そこそこ愛着が湧いてきて、ああ、なるほど、あなたはこういう顔をしていたのね、こんにちは。という気分。

 

小学校高学年から、中学校の時に習っていたピアノの先生はとても厳しかった。もちろん意地悪とかでは全然ないけれど、とにかく厳しくて、めそめそと泣いたことも何度もあった。先生は「教え子は、将来職に困ったらピアノで食っていけるようにはしてあげたい」と、言っていた。それがどんなことか!!私はあんまり理解していなくて、ただひいひい言いながらピアノを弾いていた。まあ、中3で勉強との両立が無理でやめてしまったし、そもそも全然上手くなかったのだけど。(今無職になってもピアノで食べるのは逆立ちしても不可能……すみません先生)

 

先生は現役のピアニストだった。国際結婚をして異国に住み、ピアノで食っている人だった。笑うと優しいが、それでも(繰り返しになるが)厳しい人だった。その先生と、私の母が雑談していた時に、「コンサートの前はいつも本当に本当に緊張して、いつもなんでまたここに来てしまったんだろう、もうこれで最後にする、絶対辞める……って思うんですよね〜」と、話していたのを、なんだかとても良く、今でも思い出す。

 

あんなにピアノが上手くてかっこよくて成功しているように見える先生ですら、そうなのだ。私も、原稿も修羅場も毎回毎回辛いけど、毎回、もう良いよって思ったりもするけど、それでもやっぱり書くし、続ける。それでも続ける。

 

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夜中にシナモンロールを焼く。
フィンランドに行きたい。