出発の日、SAから望む朝7時の駿河湾。
一週間の大阪帰省の旅を終え、ようやく東京に帰ってきた。大阪は夫の実家があり、また私の弟家族も住んでいるので、義実家と過ごしたり、弟一家と過ごしたり(主に甥っ子とうちの子を遊ばせたり)となかなかてんやわんや。義実家とは親戚とのお食事会に出たり、大阪城公園で遊んだり、奈良で大仏をみたり。弟たちと一泊で奈良健康ランドも行ったし、車なので帰りはどこか途中で一泊してくるのが常でもあり、旅程はなんだかんだ長くなる。一週間ホテル暮らしは楽しかったが、やはり疲れた。昨日は一日中家で屍になり、ジムの予約もキャンセル。とはいえ、毎晩ホテルで腹筋やスクワットをしたり、毎朝朝食バイキングの牛乳でプロテインを作って飲んだりしていたこともあって体重は微増で収まっていた。セーフッ。ここから巻き返したい……が、オミクロンが急激に拡大する中でどれだけジムに通えるかな。
赤ちゃんの頃はほっぺたのサイズが骨格の積載限度を超えているのではないかと思われるほど、むちむちほっぺちゃんだった甥っ子はもう四月から一年生。一歳年下のうちの子に対してお兄ちゃん風を吹かせたい気持ちもあるようで、(弟曰く)一人で遊んでいる時は絶対チャレンジしないような大きな遊具も、果敢に登って行く。子は高いところは平気だけど慎重派でもあるので、ゆっくりゆっくり登って行く。なかなか個性が見えて面白い。背丈がほとんど同じなので、双子みたいにずっとくっついて遊んでいた。
4階から8階まで巨大な室内ジャングルジムになっている堺市のビッグバンの遊具の塔。大人は必死に隣の階段をいったりきたりした。
炎環1月号の、新梨花集作家(新同人)特集より。
よくお名前をお見かけする人が新同人となられて「おお!」となった。せっかくなので、今回の特集からお一人一句ずつ鑑賞してみたいと思う。(敬称略です)
無花果の断面告げず心理室 Mコスモ
心理室を知らなかったので調べた。心理カウンセリングや検査をしてくれる病院の一部署という理解をしたのだけど、なぜかイメージで出てくるのは告解室のような場所。無花果の断面にじっと潜む秘密をさらに飲み込んで、静寂だけが残る雰囲気。少し不穏で不思議な感じが好きです。
秋うららモンマルトルの石畳 奥平黎
モンマルトルというとアメリの音楽が勝手に流れてくる世代。秋うららという朗らかで爽やかな季語で、美しいパリの秋が目に浮かぶ。パリは(というか欧州の都市は)どの季節も美しいけれど、石畳が最も映えるのは秋だなぁとしみじみと思った。
厄除けの名有る地に住み年の暮 河野幸子
厄除けで有名なのは、あそこかな、ここかな、などと思いを巡らせてみる。厄除けで有名な土地でも、住んでいる身としては(多分)特別な恩恵があったりするわけでもなくて、当たり前の生活、当たり前の日常が回っているのだろうけど。何かと神社に参拝する機会がある年末年始には、そういえば厄を避けてくれるんだった、なんて、そんなことを思い出すのだ。
あふむけの蝉の一声吸はれゆく 田辺みのる
蝉が声を吐いて出しているのか吸って出しているのかなんて考えたことがなかった。でも仰向けに倒れた蝉の「ジッ」という音が、最後に息を吸った音にも聞こえるし、そして小さな蝉が膨大な夏に吸い込まれて行く感じがある。夏というのは空にしろ森にしろ街にしろ、どこか膨張していて大きい。
縁を呼ぶ恩師の言葉しぐれ虹 永井朝女
初冬のしぐれ虹は太陽の角度の関係でとても大きく美しく現れるらしい。そんな優しく美しい虹と、恩師の言葉の取り合わせが素敵。縁を結ぶ、わけではなくて、縁を呼ぶ、というところがさりげなくて良い。
珈琲とフレンチトースト三日はや 西脇あす香
お正月や、お正月の料理は毎年それなりに楽しみにしているのだけど、あっという間に飽きてしまうのは何故なんだろう。フレンチトーストも珈琲も、とっても、とってもホッとする。お正月は自分時間が減ってしまうので、その中でも好きなものを好きなように頂けることにホッとするのかも。
雨の度年とるやうに秋深む 長谷川のり子
冬が近づいていることと、老いていくことのイメージは割と近いと思うのだけど「雨の度」という言葉で、はっとするようなリアリティが篭っていてイメージが一気に鮮明になった。秋深む、という季語が、変わっていくことより静かに沈んでいくようなイメージであることも雨と重なって美しい。
加湿器の青き点滅クリスマス 春野温
寝静まった寝室に見える加湿器の青い光。幼子がいる家のクリスマスは、ここからが本番だ。起こさないように、そっと隣を抜け出して、隠していたプレゼントを取り出して。青い点滅は昔見たイルミネーションのLEDにも見える。あのクリスマスも、このクリスマスも、少し忙しなくて楽しい。
燃やされし本あまたなる銀河かな 星野いのり
「燃やされし本」は、焚書を想起させてとても不穏なのだけど、「あまたなる銀河」という言葉が、それぞれの本の中に広がっている一つ一つの銀河と、それを見つめている純粋な視線を想起させる。純粋さと真っ黒な絶望が共存している危うい感覚。光と闇のコントラストが強烈でヤバい美しい。「〜かな」という柔らかな詠嘆がさらに熾烈さを添えていて好き。
空蝉の新しきもの古きもの 前田拓
同じ夏の間でも、古い抜け殻もあれば新しい抜け殻もある。子供たちが取っても取っても取りきれないほど、都心にいたって、あちこちで蝉は羽化している。一つ一つの蝉に、ちゃんと命があって、物語があったんだということを改めて感じる。
芽を抱く冬の切り株古ピアノ 松橋晴
や、優しい。そしてあたたかい。古ピアノの少しとぼけた佇まいや、調律がずれている音も、寂しさもありつつ温かい。春は来ることを知っている存在が、隣にあることは、「大丈夫だよ」って言ってもらえるような安心感がある。
皆さま、おめでとうございます。
的外れな鑑賞をしていたら本当にすみません。
同人の方による紹介文(でいいのかな?)もとても読み応えがあって面白かった〜。
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ちなみに、炎環1月号はP70に鈴木陽子さんの「サーモグラフィー(30句)」(12月号掲載)の鑑賞を載せていただきました!初めてで緊張しましたが、読んでいただけると嬉しいです。陽子さん、ご依頼ありがとうございました!
二回目の地震速報おでん煮る 十月(1月号から)
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