october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

100年俳句計画 2022.01②

1月は怒涛の月だった。日常が安定せず忙しかったし、悲しい知らせも、大変な知らせも、嬉しい知らせもあった。とっても良いことも、あまり良くないこともあった。それでも健康で終われたから良い。コロナ陽性者、1月1日は79人、31日は11751人。早くオミクロンの波が収まりますように。お友達に会いたいし、句会にも行きたい。

#overthesunの企画で育てていた水耕栽培のヒヤスンスはちょろっと咲いてあっという間に枯れてしまった。昨日花屋さんに行ったら鉢植えのヒヤシンスが売っていたので、それを買ってきて追いスンスだ。ベランダでも早春のお花が咲き始めた。お花は良い。やっぱり、春の開花が一番心踊る。今年の5月は薔薇園に行けるといいなぁ。

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八重咲きのアネモネ。白?グリーン?

 

 

引き続き100年俳句計画1月号。

百年百花のコーナーより、気になった句を少し。(敬称略)

 

寒林に赤い男が待つてゐる

凩のバスには古き男たち 初蒸気

どちらも、モノクロのサイレントムービーのような印象を受けた。実景には色も音も、風の感触や匂いもあふれていたはずなのに全て削ぎ落とされただ残像を指でなぞるしかできない、硬くて理解が難しい映像。1句目はそこに赤い色だけが見える。ぱっきりとした赤ではなくて、どこかくすんだ、でも陰影で赤だとわかるような。他の色がないからこそ、異様に見える。そこに言葉はなく、ただ、男がいて、待っているという事実だけが恐ろしい。2句目、こちらも言葉はなく、ぶっきらぼうな男たちが各々バラバラに着席している。外では木枯らし。このバスがどこへ向かったのかは、今となってはもう誰もわからない。

 

性格を直せセーター編み直せ 桜井教人

命令調が面白いし内容も好き。性格も直らないし、セーターも編み直せない!!でもまぁ人当たりや考え方を修正するのは不可能ではないし、セーターだってその気になれば編み直せる。でも気に入っている。ほつれているところもまた愛しい。これでいいのである。そうして今日も己が心の如くしっかりと編まれたセーターを着ている。イエイ✌️

 

開かれぬホテルの聖書冬銀河 杉山久子

旅行で行ったどの国のホテルにも、大体聖書は置いてある。出張で行く国内の狭いビジネスホテルでもそう。開いたことはないし、どれくらい開かれているものなのかもわからないけれど、これがここにあることで心が平穏になる人がきっとたくさんいるのだろう。今日も世界のどこかのホテルで、旅人の手で、開かれる表紙がある。ぽつり、ぽつりとどこかで光がまたたく感じ。淡い光の冬銀河が合っている。

 

人体にいろいろな味鶴来る 箱森裕美

上五中七でいろんな妄想が膨らむ。そう、人体の色んなところは色んな味がする。それから感覚をもう少し広げる。目で見る味。耳で聞く味。匂う味。感触で知る味。意識的にせよ、無意識にせよ、私たちは五感で他者の「人体」を味わっている。推しの横顔。幼い我が子の汗臭い頭。大切な人の押し殺した笑い声。そんなありふれていて、日々の中にあって、時折どうしようもなく込み上げる愛おしさ。怒涛のように来る出水平野の鶴たちを想う。

 

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