october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

まんまこと/畠中恵

子供の頃「自分が赤ちゃんだった時の話」を、親から聞くのが大好きだった。あの頃は自分が生まれてから物心が着くまでの間は、自分の手が届かないとっても長い長い年月があるようなイメージがあったけれど、それは本当に瞬きするような刹那でしかなかったんだと、最近の子の成長を実感しながら思う。永遠に続くような気がしていた保育園はもうすぐ終わり、同じだけの時間が経つ頃にはもしかしたら子は私の背を追い抜いているかもしれない。

一瞬一瞬を大切にする、というようなことは口にするのは簡単だが、実際はどういう状態のことだかわからない。こぼれ落ちていくものを、自分ができる範囲で、形で、言葉で刻んでいくぐらいしか思い浮かばない。

 

オーディブル

ちょっとした事件にほっとする大団円。気楽でかわいらしくて笑えて愛おしくて、でもその背後には言葉にならない切なさが横たわってもいる。人生はままならないけど、そう悪いものでもないと信じられる。この程よい湯加減が、心がすり減っている時に聞くにはちょうど良いと思った。朗読が本当にとにかく良くて、麻之助のおばかわいさったらない。