october notes

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長編を楽しく書くコツ(再掲+追記)

2014年に「長編を楽しく書くコツ」という文章をPrivatterに書いて、ちょっとだけバズった。(3000RTくらい)

 

かなり勢いとノリで書いた文章だけどそれなりに好評だったし、せっかくnoteを始めたのだから再掲しようかな、とは思っていた。とは言え、今は同人作家さんでも創作ノウハウやTIPSを公開している方がたくさん居るし、もっと整理されて丁寧な素晴らしいテキストは山ほどある。特段、目新しいことも書かれていないあの文章を今更アップしなくても良いかなと言う気持ちもあった。

だが、今回なんとなく読み返していたら長編うんぬんより「ぐわー!書きたーい!!」みたいな気持ちが盛り上がった。創作の参考になると言うよりは、もしかしたらプチカンフル剤的な文章でもあるのかもしれない。思い出してみると、当時もそういう言葉を多く頂いた気がする。長編を上手く書くコツではなくて、楽しく書くコツなのがいいのかも。なんにしても楽しいということはとても大事なことなのだ。少なくとも私はそう思う。

ありがたいことに今でもこれが好きだと言ってくださる方もけっこういて、マシュマロなどでも言及して貰ったりする。なので、やっぱり、せっかくだから、再掲することにした。

 

なおnoteからhatenaに移管したのでこれは再掲の再掲ですが文章はそのままです。

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【長編を楽しく書くコツ】

 

私は長編小説(二次創作)をメインに書いている同人字書きです。
フォロワーさんに「長編を楽しく書くコツってありますか?」と、質問いただいたのでちょっと考えてみました。
思いついたことを箇条書きにしてみます。

 

<長編を楽しく書くには!>

・プロットを書き出すより前にイメージを膨らませる
・とにかくその物語の世界に浸る
・テーマソングを何か決める(と気分が乗りやすくなる)
・これを書き上げないと死んでしまうと思い込む
・登場人物におもいっきり感情移入する
・同時にものすごい引いて俯瞰する、を繰り返す
・エピソードをとにかくたくさん盛り込む
・複数のキャラの物語を絡める
・伏線をたくさん入れる
・書きたいところから書いてってつなげる
・悲しい事件が起きた後のハッピーエンドという展開にする(カタルシスがでかくて気持ちいい)
・とにかく1本書き上げる
・とにかく何が何でも1本書き上げる
・長いのを1本書き上げると見える景色が違う
・終わらせる
・まずは1本書き上げてからだ
・1本書き上げて初めて長編を書く喜びがわかると思う

 

うーむ。
これを書いてて思ったんですけど、長編って書くのすごい苦しいじゃないですか。
苦しいんですよ。書いてる間、孤独だし。原稿期間長いし。
本当に激しい「こんなの誰が読みたいんだ病」「これ面白くなくない?病」を何度も何度も何度も罹患するし。
こんなに血を吐くほど頑張ったって、報われるとも限らないし!?
しかも長編って短編に比べて、なかなか読んでもらえない。
普通に、読むのが億劫だから。時間かかるから。
「ちょっとこれさくっと読めるから読んでみてー」って友達に頼むのもなかなかしにくい。
せいぜい「時間があったら読んでくれたら嬉しいな」って言える感じ。

 

だけどお話を書き上げた時の喜びってやっぱり長い話だと格段に違うと思う。
や、他の人はしらん。でも私は違うのです。
一万字の支部用の話を書き上げた時とコミケあわせの文庫十万字入稿した時の達成感は、もうまったく別世界なんです。
人様からそれが評価されるかどうかとかそういうのはもうこの際おいといて(どうでもよくて)
私が、自分ひとりの力で、こんな長い話を、書き上げた!
というのが、純粋に快感です。

 

日常生活の中で、なかなか、たった一人ですることでこれほどの達成感を得れることって少ないと思うんです。
同人ってその喜びを比較的得やすい趣味だと思うので、せっかく同人やってて、そしてちょっと文章書けたりするのなら長編書いてみたらいいじゃん、たのしいよって思います。

 

だから、とにかく長編を楽しく書くコツは、とにかく1本書き上げることだと思います。脳内麻薬が出て、中毒になります。
そしたら次から、苦しいのがちょっと楽になる。
そうすると書きやすくなるし自分の味みたいなものも出てくるだろうしもっとうまく書けるようになるし、何よりもっと長く書けるようになると思う。

 

今書けるのが、最大3000字ならまずは一万字。
二万字なら、まず四万字の長編書いてみる。
そしたら次は五万字。
何回かイベント出てコミケ出てを繰り返したら毎回十万字、十五万字ふつーに書くようになってるかも。

 

そして。

「その最初の1本を書き上げられなくてこまってるんだよーーー!!!!」

という場合の、コツも私なりに考えてみました。
もう余裕で書けるわって人はスルーしてください恥ずかしい。というかそう言う人にはここまで読まれていることが既に恥ずかしい。

以下は、高校生の時の私にアドバイスをするようなイメージで書きました。
気になりましたら、どうぞ。

 

<とりあえず一本長編を書いてみるためのコツ>

【プロット】
プロット三割とオチが出来たら書き始める。途中は書きながら考える。
プロットは変わるし完璧になるまでまったらなかなか書き出せないし、書きながらのほうが自分が物語に対する理解も深まり、話が上手く流れやすいと思う。
なおオチはざっくりでいいので「こんな感じで落とす」くらいのことは考えておくことをおススメする。
書き始めより、完結させる時のほうが胆力が必要で、しかもその時期のほうが体力気力も圧倒的に無い。(ランナーズハイみたいな状態ではあるかもしれないが)
なので、その時、投げ出さないように足がかりを作っておいてあげるのです。

 

【時間】
物語の時間の枠を決める。
その中で起承転結を割り振るとペース配分しやすい。
過去を絡めたりすると、絡ませるエピソードに幅が出るので長くなる。
全体の時間枠を始めに考えておくと、物語全体を俯瞰で見やすくなる気がします。あくまで感覚ですが。

 

【登場人物】
登場人物を増やす。メインCP二人に絡ませる準主役級のキャラを二人増やすだけで話は長くなる。
キャラは増やし過ぎると収集つかなくて死ぬので慣れないうちは気をつけましょう。

 

【起承転結】
起承転結のそれぞれの中にも小さな起承転結のような山を作る。
「承」でつまづく場合は、そこでキャラの背景や過去を出したり、回想を入れたり、伏線を貼ったり、そのための小さめのイベントを入れたり、自由にやってみる。転に繋げるための色々を書いてみる。

長編は「結」が決まると、途中が少しダラけても読後感が良くなるので、結の最後は気を使う。
オチは絶対投げない。解釈を読者に委ねない。物語が雑で適当に見えちゃう。
綺麗に落ちるので、最初に書くのはハッピーエンドがいいと思います。
メリバ・バッドエンドは上級者向けということを心得る。

 

なお、構成については、起承転結以外に三幕構成というのもあって、そっちの方が起承転結よりわかりやすいかもしれないので調べてみるのもおすすめです。
記事下部の追記で参考文献を紹介しています。

 

【物語が浮かばない】
二次創作なら物語が思い浮かばない時は童話パロを書いてみるのもおススメ。ベースとなっているストーリーがあるので書きやすいし、遊びも入れやすい。
複数キャラを絡める練習にもなる。できるだけ、エピソードは端折らないで丁寧に書くのがコツです。

あと上に通ずることではあるけれど、王道の物語には類型(パターン)があるので、その勉強をしてみるのも良いかも。読んだことがないので紹介はできないのですが、そう言う本もけっこうあるのでAmazonなどで探してみるのも手かと思います。小説の本より、シナリオ・脚本の本のほうがこの辺はたくさんある。

 

【文章】
文章が出てこなくなったら小説を読む。とりあえず活字を吸収する。
情景描写が苦手な場合は、好きな小説の情景描写を書き写す練習をすると、指が型を覚えます。
アクションもエロも会話のテンポも同じやり方で練習できます。
(そのままを使うのはもちろんダメよ)

 

【その他いろいろ】
・仕上がり気にしないでとりあえず浮かんだことは全部書いてみる。あとから削る
・R18シーンを2回以上入れる構成を考えてみる。
・「この話面白く無い」病は誰でも必ず罹患します。無視して淡々と書きましょう。
・上手くなったら書く、という考えは甘えだから捨てよう。
・だって書きたいんだもん!という情熱を忘れない。
・必ず、終わらせる。

 

一本仕上げた経験は、絶対に大きなプラスになります。
その反面、未完を重ねて行くのは「投げ出した自分」を重ねて行くのと同じなので、ゼロどころかマイナスです。

 

短編だろうが長編だろうが苦しみながらのた打ち回りながら作品を生み出す同志の皆様はあまねく尊敬します。

創作は死ぬほど苦しくてとてつもなく楽しい。
今日も原稿頑張りましょう。

 

 

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追記

 

そもそも私は昔、全然長編が書けないタイプの字書きだったのだ。

 

長編を書くのは長編字書きの才能がある人だけだと思っていたので、憧れはあったけど、長編を書こう!と、目標にしたことはなかった。当時はプロット作りもロクにしていなかったので、当然「よし!長編プロット作って取り組むぞ」となることもなかったし、あの頃は原稿で何字書いたとかそう言う話になることはあまり無かった気がする。そもそもTwitterが無かったから気にしたことが無かっただけかもしれない。私はただお腹の中に生まれた物語を外に出すことを愚直に繰り返していたら、いつの間にか生まれる話の多くが長編になっていた、というのが実のところだ。

 

それでも、時間は掛かった。今でこそ私は長編書きですみたいな顔をしているが、最初に10万字を超えた話を書いたのは9年前(アラサー)の頃なので(余談だがそれは何故か二次創作ではなくて、初めて書いたオリジナルでもあった)、同人始めて18年の活動歴の半分くらいだ。20代前半、あるいは10代からガンガン10万字選手だったみたいな話を聞くと、素直にすごいなぁと思う。(少し嫉妬もする。ちくしょうめ!)

 

まあでも色んな人がいる。何が正解ということもない。

 

書く量に規定がある新人賞に投稿する小説などは別として、趣味で書いている作品に関しては、文字数もページ数も本来は何でも良いはずだ。それらが作品の評価とも書き手の力量とも直結はしない。10万字書けたら偉いわけじゃないし、文字数はそんなに大事なわけでもない。そこは絶対に何度でも主張したい。物語によってベストな文字数というのは絶対にあって、それを無駄に引き延ばしたり、あるいは短くしたりとすることは意味が無い。むしろ浮かんだ物語に対してベストな文字数を尽くせることになることが、大事なことなんだと思う。

 

ただ、まあそれはそれとして、長いお話に取り組むのは楽しい。そして10万字超えると「うおおお!!いっぱい書いた!!」という達成感・満足感が得られて、それは本当にわりといいものなので、やってみたかったらチャレンジしてみるのがおススメ。という、趣旨で、この文章を書き、そして再掲しました。楽しく、がんばろ!長いは正義ではないが、楽しいは正義。

 

ついでにですが、私は小説の書き方などの本を読むとけっこうやる気を刺激されるのでここ最近(と言っても3年くらい)で読んだ中で、おすすめのものを幾つか紹介します。

 

工学的ストーリー創作入門 / ラリー・ブルックス

文章にまあまあ好き嫌いはあると思うけど、ベースとなっている三幕構成についてかなり詳細に、熱く説明をしてる本。私はけっこうわかりやすかった。やる気が出る!

 

感情から書く脚本術 / カール・イグレシアス

先日、友人の字書きエッセイ本にエッセイを寄稿させてもらったのだが、その時に頂いた謝礼でこの本を買った。そして読んだら、そのエッセイに書いたことと幾つか被ってることが書いてあって(タイトルの付け方など)「やったー!」となった。

 

ミステリーの書き方 / 日本推理作家協会 編著

色んなミステリー作家の、書き方や原稿に関するエッセイ。乙一先生が三幕構成の話をしている。読み物として面白いし、書き方に正解って無いんだなぁって改めて思える。

 

アイディアを捜せ / 阿刀田高

短編の書き方としては、阿刀田先生のこちらが面白かった。手法の取り入れ方や考え方がものすごく柔軟だし、なるほど、となる。

 

SAVE THE CATの法則 / ブレイク・スナイダー

これもめちゃめちゃ有名な本。類型を知るのにとっても参考になる。

 

 

そして、ついでにこちらもご紹介。

[電子版]わたくしたちの字書き読本 | ハナ

booth.pm

寄稿させてもらった友人の字書き本はこちら。
(私は「キャッチーさについて」書かせて貰いました)

長谷川ミオさん(@hanamio3)のTwitterでの字書きお悩み相談室(Q&A)がベースとなっているのだけど、書き下ろしのエッセイもめちゃくちゃ優しいし元気が出るしやる気がでる!!同人誌を作る人、字書きさんはもちろん創作する人みなさんにオススメ。冊子版は完売してるけど電子版があるのでぜひ!