october notes

俳句と小説と読書と記録と記憶

同人誌の感想でレポートを貰ったことと、それで色々考えたこと。

※二次創作(BL)の内容を含みますのでご注意ください!!

先日、私が書いた同人誌について、感想のレポートを貰った。
何を言っているのかわからねーと思うが、私もわからなかった……。

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これが届いた。表紙と参考文献も併せると、A4サイズ22ページになる大作である。(トレペ感想の補足、となっているが、その辺りは後述する)

ちなみに私は長編小説をメインで書いている二次創作同人字書きだ。長編小説は書くのにとても時間が掛かるし、原稿期間は常に孤独な戦いである。無事発行となっても気軽に読んでもらえるようなものでもないし、また読むのに時間がかかる。そんなだから本当にもう手に取ってもらえるだけで、そして読んで貰えるだけで嬉しいと言うのは間違いない。だが、長年活動していると、時折長く熱い感想を頂くことは今までもあった。それはお手紙だったり、レシートみたいなマシュマロだったりした。もちろん、いつもいつだってものすごく嬉しい。

だが。

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流石にこれは初体験である。私は感動と驚愕と感嘆の狭間で、OMGと呟いた。OMG……何が起きているんだ?

 

このレポートをくれた白鬼好代さん=Cさんと最初にやりとりをしたのは、去年の9月にあったオンリーイベントの少し前のことだ。pixivで丁寧なメッセージをくれた彼女は「夏コミ新刊(※全4巻シリーズの3巻目)に乱丁があった為、交換が可能ならば、トレペ感想をはさんでいいですか?(要約)」と聞いてくれた。トレペ感想とは、同人誌の本文の上にトレーシングペーパーを重ねてそこに感想やコメントを書き込む臨場感に溢れる感想スタイル(?)のことで、何度かTLに流れてくるのを見たことがあった。同人作家みんなが憧れるやつ!!でも今までTLで見たトレペ感想って大体漫画だったし、そもそも夏コミ新刊は128Pあったんだけど!?お気持ちは大変ありがたい……けど、その手間は想像に易くなく、だが、どうしても見てみたい気持ちがあったそりゃそうだ欲しいに決まっているそんなの!!私は乱丁があった旨をお詫びし、図々しくも、お手間じゃなければ是非お願いしたいとお伝えした。

9月のオンリーイベントでCさんは本当にトレペ感想を持ってきてくれた。

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細かく萌えたポイントに線を引いてくださったり、コメントや、考察、推理(※ミステリだった為)、時にはキャラへの声援や、黄色い声が書き込まれていたり……。まるで自分の話が映画になって、その応援上演を見ているような。あるいは、副音声でオーディオコメンタリーを聞いているような。そんな純粋な感動があった。同時に、その手間の多さに恐れおののきもした。すげえ、とにかく、すげえ。

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そして今年の1月インテにて、Cさんは1巻2巻分のトレペ感想も持ってきてくださった。(これは乱丁本ではなかったので、トレペだけ受け取って私が自分の本に挟んで楽しんだ)

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そして、その時に購入した4巻のトレペ感想と一緒に、あのレポートが届いたのである。(事前にご連絡頂いた上で、自家通販を行っていた私書箱宛に頂いた)

トレペ感想の補足、と書いてあるが、捕捉なんてものではない。まとめ、もしくは総括と言った感じだ。

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この長い長いレポート感想は、私の書いた長い小説を時系列に気になる部分を引用しながら、それぞれのタイミングで思ったことや推理したことなどを書いてくれていた。また巻ごとにまとめとなる感想と推測も。ここまでの分量、そして熱量のものを受け取ったのは初めてだった。一体、どれだけ時間が掛かったことだろう。一体、どれだけ考えてくれたんだろう。ページを捲りながら、私は何度も溜息を吐いた。溜息吐くしかないでしょこんなの!はー!もちろん感嘆の溜息だ〜〜!!

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レポートの対象となったのは2018年夏コミ~2019年冬コミまで、コミケごとに発行した全4巻(+後日譚1巻)のミステリ仕立ての長編小説シリーズと、2014年に書いたそれと対比する中長編小説だ。二次創作だが、全部あわせると67万字くらいの分量になる。400字詰め原稿用紙換算でラフに割って1675枚分。自分で言うのもなんだがいっぱい書いた。もちろん読む側にとっても相当な量だと思う。

いつも頂いたお手紙やマシュマロを読む時、真顔が保てなくてニヤニヤしてしまい家族に突っ込まれる。だがこれは、ニヤニヤを通り越して逆に真顔になってしまった。ものすごく真剣に読んでしまった。むしろ、こういう時どういう顔をしたらいいのかわからないの……というような話かもしれなかった。

Cさんは私が仕込んだ細かいネタや伏線や、しょーもない会話や、個人的な切ないポイントや、そういうのを丁寧に拾ってコメントをくれた。今回始めてミステリ風のお話を書いたので、伏線やミスリードを色々仕込んでみたが、それに対しても都度感じたことや気付いたこと、気付けなかったことなど色々書いてくれて、とても面白かったのと同時に、勉強にもなった。

例えばだけど文豪が今生きてて、高校や大学の授業で自分についてレポートが書かれてるの読んだらこんな気持ちなのかな……など、図々しく思った。

 

このレポートを読み終えてから、暫しぼんやりした。
それから、色んなことを考えた。
今まで貰ったお手紙やマシュマロ、DM、友だちからの感想LINEのことなどを考えた。自分が書いて渡した感想の手紙のことなども考えた。

作品に対する反応と言うのは、多分、書き手じゃない人が想像する以上に少ない。(ちなみに回りの話を聞いていると、決して大手だからたくさん反応をもらえるわけでもないという印象がある)

一回のイベントで、一回でも前作について何かしらコメントだったり、お手紙だったりをもらえたらそれは超絶ハッピーだし、新刊を出してもマシュマロ含めて感想が一つも来ないなんてことは割とザラにある。(というかそっちが基本だ)

だから「どんな差し入れが嬉しいか」って話題になると多くの同人作家は「お手紙が一番嬉しい」って言う。でも手紙を書くのは手間がかかるし、頭も使う、気も使う。好きなサークルさんがたくさんいればいるほど、書きたい気持ちがどれだけあっても、物理的に叶わないことが多い。SNSでは「感想なんかいらない」という少数派のサークルさんの声も目にする。だったら、やっぱりやめておこうかな、となる気持ちも痛いほどわかる。私だって多くの場合、読み手側でもあり、感想欲しい気持ちがわかりながら、なかなかそれを伝えられなかったりする。

その一方で、貰ったお手紙にお返事する機会はほとんど無い。マシュマロは基本お返事するけど、イベントのお手紙は受け取りっぱなしになってしまう。だけど私は改めて何度もお手紙をくれたKさんや、Hさん、つい最近、長年読んでいたけど始めてお手紙書きましたと書いてくれたMさん、チャンスは今しかないから届かなくなってしまう前に、とすぐに2度目のお手紙をくれたSさん、など、今まで頂いた色んなお手紙のことを考えた。

私が孤独に書いていたお話に対して、貰ったレスポンスは、星の無い夜空に振ってくる流れ星みたいなものだった。届いたよ、と。その想いを返してくれたことが嬉しいし、また走り出す力になる。

それから、もっと前のことを思い出した。
私は昔、流星群を見た。

ジャンルの潮目というものがあり、私が8年いたこのジャンルは、活動を始めて1年半ぐらいのタイミングでアニメ化して、いきなりとても大きなジャンルになった。人が増えるのに比例して、作品に対する反応も増えた。ジャンルバブルと言うやつだ。困ったこともなくはなかったが、読み手としても、そして書き手としても、良いことのほうが圧倒的に多かった。そしてその時貰ったレスポンスの量は、それまでと比べると、確かに流星群だった。私の人生においてこんなにお話を読んでもらえることがあるなんて、と突然沸いた、過分にも思える幸福に私は溺れた。もちろん、それがあっという間に通り過ぎてしまうことも、たまたまそこにいることができたから受け取れたのだと言うこともわかっていた。

そして、私はその甘美で膨大な波に対する感情の制御が上手くできないままに、引いていく波のように人が減っていくジャンルにその後も居続けた。まだまだ書かねばならないものが山ほどあった。私は長っ尻なタイプなのだ。いつの間にやらサークル数もかなり減り、時折寂しく思うことはあっても、気楽なバランスを取りながら、楽しく活動を続けていた。

ほぼピークの時に出した長編で、多分私が書いた中で2番目に多く読んでもらった、今でも感想をよく頂く話がある。個人的にも初めて25万字を超えた話で、想い入れも強い。その一方で、もうあれを書いてから6年経っている。その6年の間、出産で1年休んだ以外はほぼずっと同じCPを書き続けて来た。自分の中ではいつかアレを越えるものが書きたいという想いが燻っていた。でも、それは無理だろうなとわかっては居た。あの時の流星群の体験を超えることは無理だ。まあ今読んでくれる人が楽しんでくれたらそれでいいんだけどさ、って。そう思いながらも、まあ、寄せては返す願望みたいなものは持ち続けた。

今回のCさんのこのレポートは、何と言うか、流れ星かと思ったら隕石だった。どっかん、と私が勝手に個人的に抱えていたその呪い、というか、憑き物を吹っ飛ばしてくれた。こんなに丁寧に細かく読んでくださった方が、私が、書く時に感じていた痛みや感情の起伏を、なぞって、浸って、感じて、受け止め、それをこうしてアウトプットして手渡してくれた。

私が何もない世界に向かって書き綴った手紙に対して、同じ熱量のお返事が来たような。そんな不思議な経験だった。報われた、と思った。そしてふと、思い出した。これは6年前の私が感じたこととまったく同じだな、と。

この体験はまた枷になるかもしれない。新しい憑き物になるかもしれない。でも、それでも良いんだと思う。私はこれからも過去の自分と戦い続けるし、敵はアップデートして行く方が戦い甲斐がある。

それにしても、長く二次創作をやっていると色んなことがあるなぁ。Cさん、本当にありがとうございました。そして他にもお手紙やメッセージをくださった皆様、殺人事件を最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。大好きです。

 

※掲載の許可は頂いています。

捕捉:「雲がちぎれる時」の感想も、今貰ってもめちゃめちゃ喜ぶのでよろしくお願いします!!!「薬と誤算」も言わずもがな!!←多分、一番読んでもらったお話(の略称)